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素敵な話:花嫁の電話

2012年07月16日 14:35

由香ちゃんが近所に引っ越してきたのは、まだ小学校三年生の時でした。
時々我が家に電話を借りに来るのですが、いつも両親ではなく由香ちゃんが来るので、おかしいなと思っていたのですが、暫くしてその訳がわかりました。
由香ちゃんのご両親は耳が聞こえない聴覚障害がある方で、お母様は言葉を発することが出来ません。
親御さんが書いたメモを見ながら一生懸命に用件を伝える由香ちゃんの姿を見ていると、何だか胸が熱くなる思いでした。
今なら携帯電話のメールがありますが、その時代を生きた聴覚障害を持つ皆さんはさぞ大変だったろうと思います。
由香ちゃんの親孝行ぶりに感動して我が家の電話にファックス機能をつけたのは、それから間もなくのことでした。
しかし、当初は明るい笑顔のとても可愛い少女だったのに、ご両親のことで近所の子供達にいじめられ、次第に黙りっ子になっていきました。
そんな由香ちゃんも中学生になる頃、父親の仕事の都合で引っ越していきました。
それから十年余りの歳月が流れ、由香ちゃんが由香さんになり、めでたく結婚することになりました。
その由香さんが、「おじさんとの約束を果たすことができました。ありがとうございます」と頭を下げながら、わざわざ招待状を届けに来てくれました。
私は覚えていなかったのですが「由香ちゃんは、きっといいお嫁さんになれるよ。だから負けずに頑張ってネ」と小学生の由香ちゃんを励ましたことがあったらしいのです。
その時「ユビキリゲンマン」をしたのでどうしても結婚式に出て欲しいというのです。
「電話でもよかったのに」と私が言うと「電話では迷惑ばかりかけましたから」と由香さんが微笑みました。
その披露宴でのことです。
新郎の父親の謝辞を、花嫁の由香さんが手話通訳するという、温かな趣向が凝らされました。
その挨拶と手話はゆっくりゆっくり、お互いの呼吸を合わせながら、心をひとつにして進みました。
花嫁由香さんのご両親は耳が聞こえません。お母様は言葉も話せませんが、こんなにすばらしい花嫁さんを育てられました。障害をお持ちのご両親が、由香さんを産み育てられることは並大抵の苦労ではなかったろうと深い感銘を覚えます。嫁にいただく親として深く感謝しています。由香さんのご両親は“私達がこんな身体であることが申し訳なくてすみません”と申されますが、私は若い二人の親として、今ここに同じ立場に立たせていただくことを、最高の誇りに思います」
新郎の父親の挨拶は深く心に沁みる、感動と感激に満ちたものでした。
その挨拶を涙も拭かずに手話を続けた由香さんの姿こそ、ご両親への最高の親子孝行だったのではないでしょうか。
花嫁の両親に届けとばかりに鳴り響く、大きな大きな拍手の波がいつまでも疲労宴会場に打ち寄せました。
その翌日。
新婚旅行先の由香さんから電話が入りました。
「他人様の前で絶対に涙を見せないことが、我が家の約束ごとでした。ですから、両親の涙を見たのは初めてでした」という由香さんの言葉を聞いて、再び胸がキュンと熱くなりました。

「NTT西日本コミュニケーション大賞受賞作品より

このデジログへのコメント

  • 一粒万倍 2012年07月16日 15:02

    とてもいい話で泣いちゃいました。

  • なな♪ 2012年07月16日 20:42

    ☆コディー☆さん:そうでしょうね。素敵な結婚式だったんだろうなと想像しちゃう

  • なな♪ 2012年07月16日 20:52

    一粒万倍さん:嬉しいです。慣れない携帯で頑張って打ち込んだ甲斐がありました

  • ゆうき2 2012年07月17日 09:57

    うん。
    1日、1日前を向いて、出来る事をやる。
    これが1番格好いいのでは?!

  • なな♪ 2012年07月17日 14:55

    ゆうき2さん:そうかも。1歩1歩の積み重ねが大事

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