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いい話…というか話の最後がΣ( ̄□ ̄;)

2011年04月29日 09:12

いい話…というか話の最後がΣ( ̄□ ̄;)

こころチキンスープより

グランド・セントラルステーションの案内所にある丸い大時計が、6時6分前を指していた。
ホームから出てきたばかりの、背の高い若い空軍少尉は、日焼けした顔をあげ、目を細めて時間を確かめた。
心臓は高鳴り、動俸を押さえられない自分に彼は驚いていた。
六分後には、この一年一か月の聞で、自分の人生に特別な意味をもつようになった女性に会うのだ。
まだ一度も会ったことはないが、その人の書いたことばに彼はずっと支えられてきたのである。
彼は案内所にできるだけ近づき、駅の係員たちをとりまく人々の輪の外に立っていることにした。
プランフォード少尉は、あの夜のことを思い出した。
戦闘中の最悪の記憶だ。
あの日、彼の操縦していた戦闘機は敵の戦闘機集団に取り固まれてしまった。
敵方のパイロットのひとりが、彼に向かってニタッと笑ったのが目に焼きついている。
彼女にあてた手紙の中で、彼は自分がよく恐怖を感じることをうちあけた。
それに対し、戦闘の二、三日まえ、彼女からの返事がきた。
「こわいのは当然のことです。どんな勇敢な男もこわいのです。ダビデ王もそうだったじゃありませんか?だからこそ、彼は『詩編』の第23篇を書いたのです。このつぎ、ご自分を疑うようなことがあったら、ぜひ私がつぎのことばをあなたに暗唱する声を聞き取ってください"死の陰の谷を行くときも、私は災いを恐れない。あなたが私とともにいてくださる"」
彼はこれを思い出し、想像上の彼女の声が励ましてくれるのを聞いて、気力も新たに操縦に立ち向かった。
いよいよ、彼女の本当の声が聞けるのだ。
6時4分まえ。彼の顔がひきしまった。
巨大な屋根の下を足早に行き交う人々は、灰色の布に織りこまれる色とりどりの糸のようだった。
女がひとりそばを通ったので、プランフォード少尉はハツとなった。
だが、スーツのえりについていたのはエンジ色のスイートピーで、約束の小さな赤いパラではなかった。
それに、娘は一八といった年格好で若すぎた。
当のホリス・メイネルは率直に自分が3Oだとうちあけていた。「それがどうだというんだ?」
彼は自分は32歳だと偽っていた。彼は二九歳だった。
彼は、またあの本のことを考えた
あれはフロリダの軍事訓練キャンプ図書館に送られてきた多数の本の中から、神が自ら自分の手においてくださったものに違いない。
『人間の紳』という本だったが、その本には初めから終わりまで女の字で書き込みがあった。
本に書き込むという癖はむかしから嫌いな彼だったが、この書き込みだけは別だった。
女性が男の心をこれほど優しく、これほど理解できるということに感動した。
彼女の名前は貸出カードに書かれていた

ホリス・メイネ

彼はニューヨークの電話帳を手に入れて彼女の住所を見つけ、手紙を書いた。
彼女も返事を書いた。翌日、彼は転属になったが、二人は文通を続けた。
一年一か月の問、彼女は誠実に返事を出した。
いや、たんに返事を出したというだけではなかった。
彼からの手紙が来ないときでも、彼女は書いた。
そして、いまや彼は二人が愛しあっていると信じるようになったのだ。
しかし、写真を送ってほしいと何度たのんでも、彼女はことわった。
これはあまり幸先がよいとはいえないだろう。だが、彼女はこう説明した。
「私への想いが誠実なものなら、私の容姿などは関係ないはずです。私が美人なら、それだけであなたが私を好きになったのだという思いに、私はずっと悩まされるでしょう。かりに私が不器量ならどうします?(こっちの方が可能性は高いと思いません?)その場合、あなたが文通してくれたのは、さびしくて、ほかに誰もいなかったからだと引け目に思うじゃありませんか。私の写真をほしがったりしないでください。ニューヨークに出て来てくださればお会いできるのだから、そのときに決めてください。おつきあいを続けるも、やめるも、選択は自由なのだということを、くれぐれも忘れないでください」
6時1分まえ。彼は煙草を深くすいこんだ。
プランフォード少尉心臓は、戦闘機の揺れもかくまではと思うほど激しく躍った。
若い女性がこちらに歩いてくる。
すらりとした長身で、ブロンドの髪は華者な耳元から後ろにカールしている。
目は花を想わせる.ブルーで、口もととあごは優しく、それでいてきりっとしていた。
淡いグリーンスーツを着た彼女は、咲きこぼれる春のようだった。
彼は彼女の方へと歩き出した。パラをつけていないということにはまったく気がつかなかった。
彼の動きを見て、彼女は口もとに謎めいたほほ笑みを浮かべた。
「こちらへおいでになるの?」と彼女が小声で言った。
抑え切れずに一歩近づいた瞬間、ホリス・メイネルの姿が見えた。
彼女はその女性のほとんど真後ろにいた。
4O歳はゆうに越えているだろう、白髪まじりの髪を、かぶった帽子の中にひっつめていた。
小太りというよりは太り過ぎの婦人で、くるぶしの太い足はローヒールの靴をはいていた。
そんな彼女が、茶色のコートのしわっぽいえり元に赤いパラをつけていたのだ。
グリーンスーツ女性は、さっさと行ってしまった。
プランフォードは、真っ二つに引き裂かれたような気がした。
ああ、あの女性のあとを追っていきたい。
とはいえ、自分の心を支え励ましてくれた憧れの女性が、いま目のまえにいる。
彼女の青ざめた、小太りの顔は穏やかで思慮深い。
それがしだいに彼には見えてきた。
灰色の目も温かく、親切な光をたたえている。
プランフォード少尉はためらわなかった。
すり切れるほど読んだ『人間の紳』を握りしめ、それで自分の身元の証しとした。
これは愛とはいえないかもしれない。
でもこれは何かかげがえのないもの、愛以上にまれなものなのかもしれない
いままでずっと感謝し、これからも大切にしたい友情なのだ。
彼は広い肩をぴんと伸ばすと、敬礼をし、その婦人に本を差し出した。
ショックを受けたまま、こう切り出した。
「ぼくはジョン・プランフォード少尉ですが、あなたは、あなたはミス・メイネルですね。お会いできてうれしいです。よろしければ…あの、お食事をいっしょにいかがでしょうか?」
婦人の顔に鷹揚なほほ笑みが広がった。
「何がなんだかよくわからないんですよ」と彼女は言った。
「あのグリーンスーツ女性、ほら、さっき行ってしまった人、彼女にこのパラをつけてくれってたのみこまれてしまって。
それで、もしあなたにさそわれたら、向こう側の大きなレストランで待ってるって伝えてくれって。
何かのテストだそうですよ。私も息子二人を兵隊に取られているんで、やってあげてもいいって思ったの」

スラミス・イシューキッシャー

このウラログへのコメント

  • Finger 2011年04月29日 13:53

    心が育んだ想いを、一年一か月分瞬時にリバースしたんだね。それを糧に新たに再生を始めた。ケア&プッシュ

  • なな♪ 2011年04月29日 21:21

    Fingerさん:そうだね

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