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印象的な話:松山千春さん
2013年01月10日 09:42
色々叩かれてもいる人ですが松山千春さんのお話。
1975年。
松山千春は19歳で『全国フォーク音楽祭』帯広大会に出場し、そこで札幌STVラジオのディレクター竹田さんと出会った。
千春は高校時代につくった歌[旅立ち]を歌った。
その時の審査員が竹田さんで、新人発掘で全国に名を知られた仕事人だった。
歌い終わった後、竹田さんは千春に一言[ギターが悪いな]といった。
鼻っ柱の強い千春は[俺はギターの品評会にきたんじゃないです!歌はどうだったんですか]と食ってかかった。
それが初めての出会いだった。
千春はその音楽祭で合格、全道大会に進むものの、審査委員の間で[歌はいいが、態度があまりにも生意気だ]と結局落選した。
竹田さんはその生意気な無名の新人をラジオのコーナーで抜擢する。
[君のコーナーは15分間。毎週2新曲を発表する。1ヶ月で8曲、半年で48曲。千春、どんどん曲を書かなければだめだぞ]
千春は必死に曲を書き続け、竹田さんの想いに答えた。
番組は千春のキャラもあり評判もうなぎのぼりとなった。
竹田さんはこうして溜まった楽曲のレコーディングを会社に申し出た。
ところがSTVでは猛反対にあう。
[あんなどこの馬の骨かわからん若造の曲をレコーディングして、赤字を出すだけだ]
竹田さんは[それなら俺の退職金を前借させて貰います]と会社を説得した。
その熱意が実って念願のレコーディングが叶った。
デビューシングルは散々悩んだ末[俺と千春が出会った最初が『旅立ち』だ。これでいこう]という竹田さんの一言で決まった。
77年1月リリースされた[旅立ち]は道内のラジオチャートで1位を獲得、瞬く間に千春はスターへの階段を駆け上った。
千春を影で支えた竹田さんは周りから[恋人より真剣につきあっている]ともいわれた程だった。
その6月に出したファーストアルバムも好調で多忙な合間を縫って千春を札幌の楽器店に連れて行った。
[千春、残念だけど楽器って言うのは声と違って値段が高い程音がいいんだ。コンサートをやるんだから新しいギターでやらなくちゃな]
竹田さんは出世払いだ、といいマーチン製の高級ギターを買い与えた。
[竹田さん、もうギターのせいにできないですね]
二人は大笑いした。
そして迎えた8月のデビューコンサート。
大成功に収め公演終了後、竹田さんは[お前をこの世界にひきずりこんだのは俺だから一生つきあっていく。俺は一介のラジオ局ディレクターだけど、お前がどうなっても最後まで責任を持つ。俺のできることは何でもする。喧嘩しながらやっていこう]
こうしてコンサートツアーが始まった。
8月26日、千春は竹田さんに電話をいれた。
[明日の函館公演も来てくれますよね]
[わかった。ところで今からニッポン放送の人とあうんだけど、オールナイトニッポンやってみないか]
[全国区じゃないですか]
[ラジオはお前の個性が生かせる媒体だ。やってみたらどうだ。明日ゆっくり話そう]
ところが次の朝千春に知らされたのは、竹田さんの突然の死だった。
急性心不全。享年36才。
終始元気だった最後の電話から数時間後のことだった。
信じられなかった。
[コンサートはやめだ]と泣きじゃくる千春。
だが竹田さんの声が、聞こえたような気がした。
[千春、甘っちょろいこと言うな!お前はプロなんだぞ!]
その夜千春はアンコールで[旅立ち]を涙を嗄らして歌った。
わたしの 瞳が濡れているのは
涙なんかじゃないわ 泣いたりしない
この日がいつか 来ることなんか
二人が出会った時に 知っていたはず
わたしの ことなど もう気にしないで
あなたは あなたの道を 歩いて欲しい
竹田さんは死ぬ直前に千春の為に東京の仕事をとり、北海道を離れたがらない千春の旅立ちを準備していた。竹田さんが生前思い描いていたように、千春は全国区のスターとなった。そしてデビュー30余年。千春は今も竹田さんを赤いバラに見立ててステージに飾っている。
千春は真っ赤なバラの理由をこう語った。[ギター1本でステージに立つと何となく寂しいから。いつもそばにいて、見守ってくれているような気がするんだ]
今彼に対してどのように思っているのか聞くと、こう答えた。[ずっと感謝してます。俺はこれまで長くやってきたけど、曲つくりやコンサートの時なんか、竹田さんにこれでいいですか?って問いかけることもある。ただ、それに対して答えが返ってこないのが、寂しいよな]
あるメルマガで読んだ話だったんだけど印象的でした
このウラログへのコメント
3日前仕事で昔からお世話になってた方が亡くなったので、今日の話は一際心に沁みるよ。
千春にそんな歴史があったなんて初耳。初めて買ったレコードは「季節の中で」感慨深いものを感じました。
30年以上前の話になりますね。当時私は中学生。心がキュンと締め付けられる思いでした。懐かしい話です。
ハートフルけんじさん:私もまだまだだし頑張らなきゃね
ジョンマクレーンさん:悲しいけどこういう絆って素敵ですよね
やじさん:お~たまに聴くと違う感覚で聴けるかもしれませんね
hiro69さん:あら思い出させてしまいましたね
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