成程話:何のためのマニュアルか？

以下のお話しは、考えるきっかけになりました。

先日、居酒屋の予約の際も一悶着ありました。
「○月○日に、個室を６人で利用したいんだけど、個室、空いてますか？」と新橋の居酒屋に電話したら、「空いている」と言う。
それじゃあと、予約を取ろうとすると、「お料理の注文をしていただけますか？」と言ってきました。
「料理の注文も何も、集まってくる野郎どもが何を食いたいのか、今からわかるわけがないから、行ってから決めるよ」
「それではご予約できません」
「できない！？その理由は何ですか？」
「３つのコースの中から、ひとつ選んでいただくことになっています」
「コースを選ばなきゃいけない理由を教えてよ」
「お客様をお待たせしないように料理を出すためです」
「いやオレたちは酒飲みだから、酒を飲みながら料理を待つのはまったくかまわない。むしろゆっくり料理が出たほうが、ありがたい」
この時、電話の向こうで固まったのがわかりました。
しばらく間があって、店員はようやく言葉を絞り出しました。
「ちょっとお待ちください。上の者に確認します」
電話を代わった「スタッフ・リーダー」なる人物は、最初に電話に出た店員とまったく同じ会話を繰り返し、最後にこう言い放ったのです。
「少々お待ちください。店長に確認します」
予想通り、店長もまったく同じ会話を繰り返しました。
このままやりとりを続けていると、さらに上の人間を呼び出しそうだったので、予約をしない旨を告げ、電話を切りました。

「野人力」
鈴木光司・鈴木美里 著
小学館新書より


面白いですね。
このケースで言えば、「お客様をお待たせしないように料理を出すため」という目的は、更に言うと「何のため」何でしょうか？
お客様に喜んでいただくため、満足していただく為なのか、それとも、お店の都合なのか・・・
もし仮にお店の都合であれば、それはそれで、「大変申し訳ございません。団体様のご注文は仕入れの関係もございまして、事前にコースを注文していただくと、私共も大変有り難いですし、より満足していただけるようサービスにも力を入れてご提供出来るよう頑張ります」
とか、
「当店では、料理の鮮度にこだわっていまして、熱いモノは熱いうちに、旬な食材を旬なタイミングで提供したいと考えております。当店の自己満足に過ぎないかもしれませんが、事前にコース注文していただくと、より食材の旬を引き出したものをご提供出来ると共に、食材のロスが減りますので、一生懸命育ててくれた農家さんや大変な思いで獲っていただいた漁師さんも喜ぶと思うんです。より良い食材を安心価格で提供するためにも、どうかご協力いただければ有り難いです」
といった感じで正直に言えば良いと思います。
それを、「お客様をお待たせしないように料理を出すため」と言って相手を気遣っているフリをしても、今の消費者は勘が良いので間違いなく気付きます。
普段何気なくしている仕事も、「それは一体何のためにしているの？」という問いかけをすると、意外にも「みんなやっているから」「先輩に言われたから」というように意味や目的も分からずやっている事があったりします。
「言われたからやる」仕事より、「目的がある」仕事にしていきたいですね♪
その目的意識はきっと、指先や顔の表情や些細な言葉遣いとなって、相手に伝わるモノだと思います(^^)b