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いい話…三波春夫さんの歌
2012年06月04日 14:18
永六輔氏の心に響く言葉より
僕にとってお付き合いの深かった歌手は三波(みなみ)春夫さんです。
こんなエピソードがありました。
彼が年をとってからなんですけど、老人ホームによく出かけることがあったんです。
ボランティアで一緒によく行きました。
ある時僕は三波さんに、奈良の老人ホームで、三波さんのことをとっても大事に思っているおばあちゃんがいる。
ただ、そのおばあちゃんは自分の名前も思い出せない、自分がだれかもわからない、でも「三波春夫」というと、にっこり笑うおばあちゃんがいる、という話をしました。
そうしたら三波さんが「行きましょう、そこへ行って歌いましょう」と言うのです。
そこで老人ホームに行ったんですが、そこで、その園長さんが「永さん、ちょっと」と言うんです。
「あのおあばちゃんの件なんですけれど、本当に三波さんが大好きな人なんだけど、一方でしょちゅう何かを歌っている」と言うんですよ。
「三波さんが歌ってらっしゃるのに、客席で歌っているのは、おかしいでしょ。だから、もし三波さんがそれは困るとおっしゃるんだったら、そのおばあちゃんは会場に入れません。でも、そんなこと気にしませんとおっしゃって下さるんだったら、入れることにしましょう」
と言われたんです。
すると三波さんは「邪魔になんかなりません。こういう施設に来る以上、色んな方がいることは覚悟で来ております。さあ、どうぞ」と言うので、そのおばあちゃんが入れることになったんです。
さて、司会の僕が「さあ、お待たせしました。三波春夫さんです」と言おうと思ったら、そのおばあちゃんがみんなの集まっているホールに入ってきたんですが、もう歌っているんですよ、大きい声で。
「♪一列談判破裂して(数え歌)」と歌っているんです。
「弱ったな、三波さんに悪くないかな」と思いながら「三波春夫さんです」と紹介しました。
三波さんは出てきました。
出てきたら、何もしないですぐにそのおばあちゃんの隣に座って、おばあちゃんが「♪一列談判破裂して」と歌い出すと、それと同じ歌を一緒に歌い出したんですね。
それから、その後おばあちゃんが次から次に歌うんです。
三波さんもまた変な人で、どんな歌が出てきても歌えるんですね。
「♪ひとつとせ」に始まって、昔聞いたあらゆる歌を歌うんです。
そしたらそれをみんなが歌いはじめた。
司会をしていた僕に「このまま盛り上げていこう」「私の歌は要らないからこのままいこう」と三波さんが言うので、本当に素晴らしいコンサートになって、三波さんは持ち歌を一曲も歌わないで一時間たちました。
その帰り道、三波さんが「永さん、私達は間違っていませんでしたか?私が行って歌ってあげれば喜ぶと思っていたこの傲慢さがとても恥ずかしい。皆歌を持っているじゃないですか。皆歌える歌があるじゃないですか。皆さんが歌っている歌の中に入ってみて勉強になりました。我々歌手は傲慢です。自分の歌を歌ってあげればいいと思ってきたことがとっても恥ずかしいです」
『上を向いて歩こう 年をとると面白い』さくら舎
[お客様は神様です]で有名な三波春夫氏は浪曲師から歌い手になった異色の大歌手。
いつも笑顔を絶やさず、派手な着物姿でファンサービスに徹した三波氏は歌う時には[神前で雑念を払って祈る時の様に客を神と見る]ということからこの言葉が出たそう。
中国の『伝習録(でんしゅうろく)』に、「人生の大病は、只だ是れ一(いつ)の傲(ごう)の字なり」とある。
傲慢やおごりは、我とわが身を滅ぼす大病。どんな時でも自らを振り返って謙虚になれる人でいられたらいいな(*^^*)
このウラログへのコメント
三波春男さんは、この機会に、はじめて
『お客様は神様です』と、思われたのでは
ななさんへ。人間の生き方を勉強するて一生涯掛かってするんだなー。とても深い、だから人生は素晴らしい。
自信をもつことと、謙虚であることを両方は難しいのかな。真の実力が身につくとそうなれるのかな。
しゅうくりいむさん:自信がついてその後にさらなる自信をつける為努力する人だったら…かなぁ?
なださん:人生は深いねなかなか悟るにいたらず
管理貞操帯さん:そうかもしれませんね
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