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いい話…ほわっとした気持ちになった♪

2011年05月26日 02:17

いい話…ほわっとした気持ちになった♪

こころチキンスープより

キッチンを通るたび、ベンには気になってしかたないものがあった。
妻のマーサ調味料棚に置いている小さな金属製の容器である。
マーサに「絶対さわらないでね」とあれほど口うるさく言われていなければ、ベンは気にもとめなかっただろう。
だが彼女によれば、母から譲り受けた「秘密ハーブ」はもう二度と手に入らないから、誰かがさわったり、中を見ょうとした拍子に賞重な中身をこぼされてしまっては困るのだという。
この調味料入れは、とても年季が入っているということ以外何の特徴もなかった。
長年使い込まれたため、赤や金色の花模様がところどころ消えかかっている。
マーサ母親も、祖母も、それにおそらく曾祖母さえ、この調味料入れに入った「秘密ハーブ」を使ってきたのだ。
ベンは、結婚直後に、マーサ母親がこの調味料入れをもってきて、妻に手渡していたのを知っている。
彼女マーサに、自分がしてきたのと同じように大事に使うようにと言っていた。
マーサは、その言葉を忠実に守った。
ベンの知る限り、どんな料理を作るときも、彼女はその「秘密ハーブ」を調味料棚から取りだして、材料にふりかけた。
ケーキパイクッキーを焼くときでさえ、オープンに入れる前に、さっとひとふりするのだ。
調味料入れの中身が何であれ、その効き目は確かなものだった。
ベンはマーサ世界一のコックと認めていたし、この家の食事をご馳走になった誰もがマーサ料理に感嘆の声をあげたからである。
なぜ、彼女は夫にその小さな容器をぜったいにさわらせなかったのだろう?
本当に中身をこぼされることを恐れていたからだろうか?
そして、「秘密ハーブ」とはいったい何でできているのか?
マーサがそれを料理にさっとひとふりしているところを見ていても、ベンにはそれが何なのか判断できなかった。
もっとも、これきりでおしまいの調味料を、妻が一度にほんのわずかしか使えなかったのは言うまでもないが。
いずれにしても、マーサはそれをどうにか30年以上使い続け、いつもおいしい料理を作ってきたのである。
一方、その中身をのぞいてみたい、というべンの思いは日増しに強くなってきた。
一度でいいからちょっとだけ…

そんなある日、マー サの具合が悪くなり、一日だけ入院することになった。
ベンが病院から戻ると、家の中はがらんとしていた。
マーサが外泊するのは、結婚以来初めてのことである。
夕食の時聞が近づいてきたが、ベンはどうしたらいいかわからなかった。
料理好きな妻のおかげで、食事の支度など一度もしたことがなかったから。
冷蔵庫に何があるか確かめようとキッチンに入ると、調味料棚に並んだ例の容器が目に飛び込んできた。
磁石に引かれるように、そこに目が吸い寄せられた。
あわてて目をそらすものの、また、視線が戻ってしまう。
好奇心がうずいた。
中にはどんなものが入っているのだろう?
秘密ハーブ」の正体とは?
あとどれくらい残っているのだろう?
どうしてさわってはいけないのか?
ベンは再び目をそらした。
キッチンカウンターには、マーサの特製ケーキが半分以上残っている。
彼はひと切れを大きく切リ取って、キッチンテーブルに座った。
が、最初のひと口をほおばるかほおばらないうちに、またあの調味料入れのほうに目がいってしまう。
自分が中身を見たからといって、何がどうなるというのだろう?
マーサはなぜあれほど秘密にするのか?
ベンはケーキをもうひと口ほおばりながら、自分の心に問いかけた。
見るべきか、見るべきでないか?
残りの5口を食べる間も、彼は調味料入れをにらみつつ考え続けた。
そしてついに、こらえきれなくなった。
彼はそろそろとキッチンを横切り、調味料棚まで行くと例の容器を手に取った。
まかりまちがっても中身をこぼすようなことがないよう、おそるおそる…
ベンは容器をカウンターに置き、注意深くそのふたを取った。
そして、大きく目を見開いた。
なんと中は空っぽで、ただ小さく折り畳んだ紙切れが底に張りついていただけだった!
彼はその紙切れを、ごつごつとした大きな手で、不器用に容器からつまみ出し、それからキッチンの灯の下でゆっくりと広げた。
短い走り書きは、ひと目でマーサ母親の筆跡とわかった。
それにはこう書かれていた。
マーサ、あなたが作るすべてのお料理に愛をふりかけなさい。
ベンは、こみあげてくるものをぐっと飲み込んだ。
そして、その紙切れを容器に戻すと、静かに食べかけのケーキのところへ引き返した。
彼にはいま、このケーキがなぜこんなにおいしいか、その理由がすっかり納得できたのである。

ドットエイブラハム寄稿
『レミニスマガジン』より


…ほわ~んとなりました(*^^*)…

このウラログへのコメント

  • なな♪ 2011年05月26日 15:40

    プロダイバーゼロさん:ですよね。愛情スパイスは格別です読んだ事あるのかな?

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