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【短編】消えてしまいたい

2009年10月03日 02:47

「愛してるよ」
「嬉しいわ、私もよ」

綺麗にライトアップされた橋が見える公園で、男と女が囁きあう。
だがその囁きを、通りかかった酔っ払いが耳にしてしまった。
その瞬間、酔っ払いは持っていた一升瓶で男を殴った。
倒れた男の頭部から、ドス黒い血が流れ出している。

「誰か、助けて~」

女が叫んだ瞬間、上空から円盤型の物体から光が酔っ払いを照らした。
酔っ払いはみるみるうちに上空に舞い上がり、円盤の中に吸い込まれると同時に、
何事もなかったように去っていった。

呆然とする、残された女。
それを私は物陰で、一部始終を見ていたのだ。
一息ついてから、持っていた外星語辞典を開いて納得した。
「愛してる」という言葉は、ザーマ星では「殴ってほしい」と訳されるらしい。
「誰か、助けて」は、ホーラ星で「この人を、連れ去って」という訳であった。
地球がザーマ星やホーラ星をはじめ、全18の星と宇宙協定を結んで数ヶ月が経つのだが、
地球旅行に来た星々の連中は、まだ言語の違いについて意識していないようなのだ。

「ふぅ」

私が溜息を言葉にした途端、背中に違和感を感じた。
振り向くと、血のついた刃物を持ったトスラ星の青年がニヤリと私を見下ろしていた。
「ふぅ」という言葉は、トスラ星では・・・

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