- 名前
- アスラン
- 性別
- ♂
- 年齢
- 44歳
- 住所
- 東京
- 自己紹介
- 今年で30 知っとるけのけ! …こんな30になるなんて、自分でも思っていませんでした...
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【短編】匂い
2009年11月13日 23:12
最近、母が犬のチロの散歩をするようになった。
母がチロの散歩をするようになって三日目、
母はチロの癖に気付いて、チロを叱った。
チロは花を見つけると噛み千切ってしまうのだ。
次の日も、次の日も、チロは花を噛み千切った。
ある日の散歩道、チロは花を噛み、走り出した。
咄嗟の事だったので、母の手から紐がこぼれ落ちた。
母はチロを追いかけた。
チロが公園の塀の裏に逃げ込んだのが見えた。
母が塀の裏を覗くと、チロは小さなダンボール箱の上に
花を置いて、ハァハァと息を弾ませていた。
母はチロの紐をその手に取ると、「行くよ」と呟いて
紐を引っ張ったけれど、チロはその場を動かなかった。
母はその小さなダンボールを開けてみる事にした。
小さなダンボールの中には、チロが咥えてきたような花が、
びっしりと敷き詰められていた。
でも、摘んだ日から時間が経っている為か、花は萎れていた。
中には花以外に、一枚の紙が入っていた。
『おかあさん おたんじょうび おめでとう たくや』
母はぼくの名前を何度も呼んで、その場にうずくまってしまった。
チロはダンボールの中をクンクンと匂いを嗅ぐと、
ふと顔を上げて、ぼくを見つめてくれたね。
ありがとう、チロ。
おかあさんに、おたんじょうびプレゼント、わたせたよ。
ありがとう、おかあさん。
ぼくを生んでくれて。だからもう、泣かないで。
ばいばい、チロ、おかあさんを、よろしくね。
さようなら、チロ、おかあさん、ありがとう。
このデジログへのコメント
いい話ですね(;_;)あぁ…涙腺がヤバい
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