「老いの実感」と「女性に恥じぬよう」　前編

じわじわと、なんとなく、あ～自分も老けてきたな～……ではなくて。
ある日突然、ズドン！　と。崖から突き落とされたような、老いの実感。

今回と次回とで、その話をします。


まず。
プロフィールにも書いておりますが、私のちょっとした自慢。
いわゆるサムズアップ、親指を立てた形で、その両手の親指だけでの
指立て伏せです。

顔は正面に向け、アゴが着くまで腕を曲げる、親指立て伏せを３０回。
ジムや道場に通ってるわけでもない、草野球なんかもしていない、
生粋の「ただのおっさん」としては、なかなかのものだと自負しております。

で。
実は若かりし頃（といっても、指立て伏せを始めたのは２０代後半頃からですが）
の最高記録は５５回なんです。
もちろん、「指立て伏せをしよう！」と思い立って、
いきなりできたわけではありません。最初は５本指から始めて、
徐々に指の本数を減らし、親指だけになったら、徐々に回数を増やしていきました。

それで。
毎日２０回やって、慣れてきたら２５回、それに慣れたら３０回……と、自分の
筋肉の成長を実感しながら、何ヶ月もかけて伸ばしていって、やがて４０回に到達。
そして４０回にも慣れた。じゃあ次は４５回？

いやいや。
いっちょ、ドーンと！　いけるとこまでやったろやないかい！　でやってみたら、
一気に５５回できました。ぅぉおーすげーぞ私！　と我ながら驚きました。

しかし。
その翌日、えらく異様な体調不良に襲われました。筋肉痛なんかではありません。
風邪を引いて熱が出た時みたいなダルさはない、痛みもなく気分の悪さもない、
ただただ純粋に、「強烈な体力消滅」。

筋肉に力が入らないのはもちろん、脳も。睡眠は充分なはずだし、公私共に
これといった強い負担はないのに、猛烈に疲労してる。眠い。座ってるのが辛い。

そんな状態だったので、しばらくトレーニングを休みました。
で、回復してから今度は親指立て伏せ、５０回。同じ症状。しばらく休む。
で、４５回。同じ症状。しばらく休む。
で、４０回。……ようやく治まりました。

しかしですね。
いきなり５５回やって、体にダメージが来たのはわかりますよ？
でも私は、まず２０回から始めて、慣れたら２５、慣れたら３０……で４０まで来て、
その４０に慣れたところだったんです。

だったら。
５５はともかく、今までの経験からして、４５でこんな症状が出るのはおかしいぞ！　と。
最初はそう思いました。

でも考えてみれば。
誰にだって「上限」はあるんですよね。
かつて、毎日必死に走りこんで、ようやく「人並」に到達した、マラソンのように。
（過去ログ「『人並』自慢」参照）
極端な話、努力さえすれば誰でもプロ野球選手になれるってわけではありません。

そりゃあ、まあ。
専門家のコーチでもつけば、まだもっといけるんでしょうけど。
しかし素人が我流でやるトレーニングメニューでは、私のこの肉体にとって、
「親指立て伏せ４０回」は上限なのである、と。
トレーニングを積み、鍛え、成長させていった、そのゴールが、天井が、４０回なのだと。

納得しました。ならば、それで良いと。
普通はそんなとこまで来る前に、脳で、気持ちで、「あ～も～シンドイ。限界」と
なってしまうであろうところ、私は根性で、自身の肉体の限界まで鍛え上げたのだと。
そう思って「親指立て伏せ４０回」を、ず～っと何年も続けました。

……が。今から３年ほど前でしたかね。
ある日、突然。ほんとに突然、何の前触れもなく、また襲われたんですよ。
忘れようにも忘れられない感覚、あの「強烈な体力消滅」に。

そうはならない、大丈夫なはず、ずっと何事もなくやり続けてきた、４０回で。


後編に続く