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いい話:クリスマスの使者
2012年12月23日 22:57
去年のクリスマスは、とても辛かった。
家族も親友も遥か遠い故郷のフロリダにいた。
私は一人、寒いカリフォルニアで働き続け、体調も崩していた。
私の職場は航空会社のチケットカウンター。
その日はクリスマス・イブ。
私は昼夜のダブルシフトぶっ通しで勤務していたが、夜も9時を回り、内心みじめでならなかった。
当番のスタッフは2、3人いたものの、乗客の姿はまばらだった。
[次のお客さま、どうぞ]カウンターごしに声をかけると、柔和な顔をした老人が杖をついて立っているのが見えた。
老人はそろりそろりとカウンターまで歩いてくると、聞きとれない程の小声でニューオリンズまで行きたいと言った。
[今夜は、もうそっちへ行く便がありません。明日までお待ち頂くことになりますが]と言うと、その老人はとても不安げな顔になった。
[予約はしてあるのですか][いつ出発のご予定だったのですか]等と聞いてみたが、聞けば聞く程いよいよ困った様子でひたすら[ニューオリンズに行けって言われたから]と繰り返すばかり。
そのうち、幾つかのことがわかってきた。
老人はクリスマス・イブだというのに、義理の妹に[身内のいるニューオリンズに行きなさい]と車に乗せられ、この空港の前で降ろされたらしい。
彼女は老人に現金を幾らか持たせ[中へ行ってこれで切符を買いなさい]と言って立ち去ったのだ。
私が[明日もう一度来て頂けますか]と聞くと、[妹はもう帰ってしまったし今晩泊まる所もない。このまま、ここで待つことにします]と言った。
これを聞いて、私は自分が恥ずかしくなった。
私はクリスマスの夜に一人ぼっちのわが身を憐れんでいた。
でも、クラレンス・マクドナルドという名の天の使者がこうして私の元に遣わされ、一人ぼっちとはどういうことか、本当の孤独とはどんなものかを教えてくれている。
私の胸は痛んだ。
私は直ちに[ご安心下さい。万事うまくやってあげますからね]と彼に伝え、顧客サービス係に明朝一番の便を予約して貰った。
航空運賃も年金受給者用の特別割引にし、差額は旅費の足しにしてあげることができた。
一方、老人はくたびれ果てて立っているのもつらそうだ。
[大丈夫ですか]とカウンターの向こうに回ってみると、片脚に包帯を巻いている。
こんな脚で衣類をぎっしりつめこんだ買い物袋を下げて、ずっと立ちつくしていたのだ。
私は車椅子を手配し、皆で老人をその車椅子に座らせたが、見ると脚の包帯に少し血がにじんでいる。
[痛いですか]と聞くと、老人は[心臓のバイパス手術をしたばかりでね。その為に必要な動脈を脚からとったんだよ]
なんということだ!老人は心臓のバイパス手術を受けたばかりの身体でニューオリンズ行きの切符を買えと路上に放り出されたのだ。
付き添いもなく、たった一人で!こんな状況に出くわしたのは初めてだった。
何をしてあげたらいいのだろう。
私は上司の部屋に行き、どこかに老人を泊めてあげてほしいと相談した。
上司はすぐ様、ホテル一泊の宿泊券と夕食と朝食の食事券を出してくれた。
カウンターに戻った私はポーターにチップを渡して[この方を階下までお連れして、シャトルバスに乗せてあげて]と頼んだ。
車椅子の彼の上に身をかがめて、ホテルのこと、食事のこと、旅の段取りをいまいちど説明しながら、彼の腕をとんとんと叩いて励ました。
[全てうまくいきますからね]
いざ出ていく段になると老人は[有難う]と頭を下げて泣きだした。
私も貰い泣きしてしまった。
後になって上司の部屋に礼を言いに戻ると、彼女はほほ笑んで言った。
[いいわねえ、こういう話。その人は貴方の為にやってきたクリスマスの使者だったのよ]
出典
[心のチキンスープ7]
ジャック・キャンフィールド他著
ダイヤモンド社
心温まるお話ですね
このウラログへのコメント
ありがとう
メリークリスマスプレゼント
ほっこりした
ボブさん:よかった!嬉しいです
ハートフルけんじさん:素敵な上司で素敵な部下が増えていきますね
satoruさん:私こそ有難うございます少しでも何か響くものがあれば嬉しいな
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