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ネットの印象的な話:敏君

2014年08月02日 22:49

敏君は、前任校の特別支援学級で担任した子なんです。
敏君の家は学校から四キロちょっとあるんです。
ですから車で送り迎えされていたんですけど、私が三年生で担任させてもらい、「お母さん、やっぱり人間って歩くことが基本ですから、歩かせましょう」って提案したら、 とってもいいご家族の皆さんで、「先生がそう言ってくださるなら歩かせます」ということで、行きはお兄ちゃんが集団登校で一緒に歩き、私が帰りに送っていくようになりました。
四キロっていったら、大人の足で一時間ですけども、一緒に帰ると一時間半は最低かかります。
二時間以上かかったこともあります。
授業でも敏君と歩いて、一年間に五百キロぐらい歩きました。
三年間担任して千五百キロ以上歩いたと思います。
敏君を送り家に着くと、家にはおばあちゃんしかおられないんです。
ガラガラって玄関を開けると、おばあちゃんが奥の居間におられて、そこでテレビを観ておられて、「おばあちゃん、帰りました」と言うと、「敏、お帰り。先生ありがとうございます」と言われて、こたつに入ったまま迎えられるんですね。
「先生ごめんなさい。私、足がちょっと悪いんで、玄関までよう行きませんけど」
「分かりました。ご無理なさらないでください」と言って、手を振って、私が玄関の戸を閉めて帰るんです。
こういうことがずっと続いていました。

ある時、いつもと同じように敏君を送っていったら、おばあちゃんが玄関の土間のところまで這うように来ておられて、「今日はちょっとだけ出てきました」っておっしゃるんです。
「無理なさらないでください、おばあちゃん」と言って帰りました。
それからしばらくすると、玄関から出て、立っておられたんです。
「おばあちゃん大丈夫ですか?」と尋ねると、「大丈夫です…」とおっしゃいましたが、痛そうでした。
そういうことが続き、敏君を担任して三年目だったと思うんですけれども、ある時、家の外の橋の所まで歩いて来ておられるんですよ。
しばらくすると、今度は公民館の所まで来ておられ、びっくりしました。
自宅からかなり離れているのですから。
歩き方はヨチヨチとした歩き方です、足が痛いですからね。
それでお母さんに聞いたんです。
「お母さん、おばあちゃん大丈夫ですか。足がお悪いのに、公民館の所まで歩いてこられて・・・」 そしたら、お母さんがこう言われました。
「あれだけ歩かなかった敏がこれだけ歩くようになった。それを見とって、私が歩かずに、こたつの中におるわけにはいかん。敏もがんばっとるから、私もがんばらにゃあ。敏には負けとられへん。だから、一生懸命歩くんだ」こうおばあちゃんが話されたと言われるのです。
がんばっている敏君を見ながら、ちょっとずつ、ちょっとずつ歩かれる距離を増やしていかれたおばあちゃん。
敏君は何にも言わないですよ、「おばあちゃん頑張れ。」とか。
まとまった言葉が、あまり出ないお子さんですから。
ですけど、その敏君の言葉を越えた一生懸命な姿に、おばあちゃんの心の中の種が発芽したんですね。

このウラログへのコメント

  • SYUZO- 2014年08月02日 23:09

    人のがんばりは時に人のやる気を簡単にたきつけるものですよね
    お祖母ちゃんやる気スイッチ押されたね

  • なな♪ 2014年08月02日 23:11

    SYUZO-さん:ですね頑張る人の姿ってやっぱりすごいですよね

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