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素敵な話…涙の呼名

2012年01月10日 14:00

素敵な話…涙の呼名

神奈川県校長先生♪中野敏治先生からの感動のお話♪
やまびこ会(全国教育交流会)の代表も務めている先生の話


【涙の呼名】


卒業式の朝も、彼女は登校していなかった。

二年生の新学期から私のクラスに転入してきた彼女

前の中学校いじめによって不登校になり、私のクラスに転入してきたのだ。

環境が変わったものの、彼女の登校回数は増えなかった。

卒業式当日、

クラスの“朝の会”が終ったとき、

生徒たちが「彼女を迎えに行こう」と言い出した。

でも、

迎えに行くには、あまりにも時間がなかった。

だから私はみんなに「彼女がいつ来てもいいように、準備しておく」と伝えた。

彼女の登校がたとえ午後になったとしても、体育館彼女だけの卒業式を行おうと考えていた。

生徒たちは彼女のことを思いながら、廊下に並び、入場準備をした。

卒業生、入場!」の言葉と共に、卒業生は式場へ入場した。

みんな胸に花をつけている。

私は胸に彼女の花をつけて入場した。

式が始まった。

開式の言葉、学校長の話、来賓の挨拶、そしてとうとう卒業証書の授与が始まった。

彼女はまだ来ていない。

みんなが式歌を歌い始めた。

その時だ。

体育館彼女の姿が現れた。

歌の最中だったが、私は自分の席を探している彼女に走り寄り、席まで誘導した。

クラスの生徒も彼女の姿に気づいた。

クラス全員がそろっての式なったことの嬉しさに感激し、みんなの歌声が涙声になっていた。

修学旅行も欠席した彼女に、クラス全員が京都から手紙を書いた。

クラスの仲間の誕生日には、いつも誕生日の歌を歌いあっていたので、

彼女誕生日には、彼女がいなくても、みんなで歌った。

彼女の家のほうを向いて歌いましょうよ」という声もあった。

毎日、彼女の家を訪ねていたクラスメイト

自分の入試前日も、彼女の家を訪ねていた友達もいた。

彼女の席に誘導するまで、私の頭の中で、たくさんのことが思い出された。

私は彼女を席まで誘導すると、私の胸から花をはずし、彼女の胸にその花をつけた。

式場の時間が止まったようだった。

私はもう涙で声にならなかった。

彼女の肩をたたいて、職員席に戻ろうとしたとき、

彼女は「先生、ありがとう」と返事をした。

学校長が「彼女卒業証書授与するから、いいね」と職員席でささやいた。

私はすぐに彼女に走り寄った。

「今から、卒業証書授与するから、いいな」と言う私の言葉に、

彼女は「はい!」とはっきりと返事をした。

司会者が「ここでもう一度、卒業証書授与を行います」と会場に伝えた。

「平成十四年度卒業生○○○子」

と言う私の声は涙でくぐもってしまい、

声にならなかった。

でも、彼女は「はい」とはっきり答えた。

それを聞いて、クラス全員が泣いた。

来賓も、保護者も、職員も、泣いた。

式を終えると、在校生がグランドで列を作り、卒業生を見送った。

私はその列の最後に立った。

卒業生は列の間を通り、在校生と別れをし、

最後に、列の一番後ろにいる私と握手をした。

その列の中を彼女も通ってきた。

そして私を見つけて、走り寄ってきた。

驚いたことに彼女は「先生・・・」と言い、

抱きついてきた。

クラスの生徒たちが私に贈ってくれた色紙に、

彼女は「先生のクラスで幸せだった」と書いていた。

家庭訪問を繰り返してきた二年間。

でも、彼女は一度も玄関に顔を出さなかった。

行く度に、彼女に声が聞こえるようにと、あえて大きな声で親と話をした。

でも彼女は顔を出すことはなかった。

手紙も書いたが、返信はこなかった。

その彼女が、私に感謝の言葉をくれ、

そして仲間たちには『ありがとう』の言葉を告げていた。


愛って、こういうことだと思います。


「人を信じることは人を救ふ」
by高村光太郎詩人彫刻家

このウラログへのコメント

  • なだ 2012年01月10日 15:44

    人を信じる事は人を救う。私は基本的に人を信じる事に。生き方の問題、其れで裏切られても、何だと思うだけ

  • なな♪ 2012年01月11日 23:48

    なださん:信じるって難しいけどできるならそうありたいですね

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