「服従」の心理

「スゴイ！！あんな状況下に置かれたら戦いになるわなぁ・・・」
最初の感想です

「ＥＳ[エス]」

始まりは新聞広告
“被験者求む
模擬刑務所で二週間の心理実験
報酬は４、０００マルク”

アメリカの大学で実際に行われた模擬刑務所内で囚人と看守役に分け二週間生活させ、観察する実験は余りに壮絶な状況になり七日間で中止になったそうです
その後この実験をする事は禁止されています
それを題材にしたドイツ映画です
公開当時は裁判続行中だった為、アメリカでは公開されていない作品です

普通に日々社会生活を送っている男性２４人が集められ、大学の実験グループらによって囚人と看守に分けられそれぞれの制服を着せられます
実験開始前に教授から六つのルールが告げられました
ルール１　囚人はお互いに番号で呼び合わなくてはならない

ルール２　囚人は看守に対して敬語を使わなくてはならない

ルール３　囚人は消灯後、会話を一切交わしてはならない

ルール４　囚人は食事を残してはならない

ルール５　囚人は看守の全ての指示に従わなくてはならない

ルール６　ルール違反を犯した場合、囚人には罰が与えられる

最初はお互い報酬目当ての「刑務所ごっこ」のつもりでやっていました
囚人役の誰かが、普段、仕事では無遅刻無欠席の一人の看守役に
「お前、腋臭臭いぞ」
っと言ったのが事の始まりでした
制服を着ると人格が変わるとはよく聞く話で、戦争に行くと人を殺せてしまうって状況に似ていると思います
言われた看守役は、そこから囚人役を冷酷に支配しようとする「看守」へと変貌してゆきます
囚人役も段々と卑屈で精神状態の乏しい「囚人」になっていくのです
不思議なものでわずか一日でお互い置かれた状況に適応した人格に変わっていきます
そして、ルールに違反した囚人達への罰は徐徐に屈辱的なモノへと変わっていきます

模擬刑務所内の出来事が、大事件へと発展していく様子は、普通に暮らしている私達の生活でも大いにあり得る心理状況の変化に思えてなりませんでした
場所を学校や会社に変えれば同じ様な心理状況になる事だってあり得る訳ですから！
実際学校なんかで起きるいじめもコレとほぼ変わらない状況なんじゃないでしょうか
誰かが「気に入らない」と思った時点で一人が標的になり、首謀者の周りは自分の意思に関係なく相手をいたぶる・・・

この実験は途中で抜ける事は自由だったんです
でもどんなに悲惨になっていっても抜けるヒトは殆どいませんでした
これを不思議に思う方も居るかもしれませんが、話を学校のいじめに戻すと、首謀者の周りの誰かに、やりたくないと言う意思があっても、自分に対する周りの反応を色々思い浮かべると、恐ろしくてやめる事が出来ないんです
今度は自分が標的になるかもしれない・・・
一人になるのが怖い・・・
などの恐怖心がジレンマになり、結局自分の意思とは関係なくやめられない
その心理に、この実験を抜ける人が殆ど居なかった訳は近いと思いました
この場合は自己の「自尊心」じゃないでしょうか
もちろん最後までやり遂げた時の報酬もありますが、その理由はこの実験の場合「自尊心」には適わない様な気がします
何故なら途中で抜ける事は、周りからは「怖気づいた」と思われる恐怖があったからです
そして、「自尊心」がそれを許さないんです

私は、いじめを例にあげました
私の中学、高校の頃っていじめが社会現象になっていて、自殺する人が後をたたなかったんですね
私も、いじめにあった経験があります
クラスの女子数名に真冬の女子トイレに連れて行かれて水かけられました
かなり屈辱的でしたよ（笑）
この作品の看守が囚人に与える罰はそんな屈辱感を感じさせます
挙句の果てに、傍観者である、実験をヴィデオカメラで観察している大学の実験グループの女性が囚人として連れ込まれ、看守の前で全裸にされ囚人服を着せられます
その顔つきはつい数日前まで社会生活を送っていた人達の表情ではなく、凍るような恐ろしさを覚えました

この作品の心理状態、会社でも似た状況は起こりえると思います
なんてったって、日本人の生活で唯一階級が存在している場所が「仕事場」ですから

映画としてはとても面白い作品ですけれど、精神状態が病んでいる時観ると更に萎えます
精神状態がゲンキな時観ても後味悪いです
（＾＾；
その辺りを覚悟の上ご覧下さい

あ、ちなみにいじめられたあたくしはあの屈辱感が許せなく、なんとか復讐しようと考えました
複数に対して腕力でやせっぽちなあたくしが対抗は出来ないので、言葉で首謀者を殺してやろうと、ある日そのオンナが屈辱を感じるであろう言葉の数々を言い放って差し上げました
その後、いじめっ子達はあたくしには一切近づいてきませんでした
（＊＾＾＊）
おしまい★