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代用品-恋愛・ OL

2009年07月28日 08:19

代用品-恋愛・ OL

「どうしたの?今日は元気無いね?」
 ホテルの部屋に入り、並んでソファに腰掛けキスを交わした後、佐伯さんがあたしの顔を覗き込んで聞いた。
「そうかな?べつに…」
 月に二回の定例会議の後、ホテルラウンジで食事を済ませ、部屋へと移動するいつもの流れ。佐伯さんは、それ以外の時には電話もメールもほとんどくれないし、会おうなんてもちろん言わない。それはあたしに彼氏が居るからなのか、あたしにその程度の興味しか無いのか、その両方なのかは分からないけれど。

もう一度、軽く唇を重ねられる。
「ほら、キスも上の空だ」
 いつもならそれだけで腰に力が入らなくなっちゃうんだけど、一昨日、街中で見かけた佐伯さんと一人の女性の姿が、頭の中から離れない。綺麗な人だった。オフホワイトシャネルスーツを着こなして、ふわっとした髪、歳は三十代半ば…かな。大人の色香っていうか、四十過ぎの佐伯さんには丁度お似合いの人。
彼氏喧嘩でもした?」
 重ねて聞かれて、むっとしちゃう。そう、あたしにも彼がいるんだし、佐伯さんが他の誰と何をしていても関係ない…はずなんだけど。どうして二人で居る時に、彼の話題を出すかな。いつもは気にしてないことまで、いちいち癇に障る。
「そういう訳じゃありません」
 はっきりと、機嫌悪そうなのが声に出ちゃう。佐伯さんの腕に、しがみ付くようにして歩いていた彼女。遠目からでも分かる大きなバストをわざとらしく腕に押し付けて…。
「ふうん…」
 面白そうにあたしを見つめると、佐伯さんはあたしの頭を撫でる。こういう子供扱いした態度もムカつくのよね。ちょっとはフォローしてくれてもいいのに。
「日曜日……I駅前でデートしてたでしょ」
 結局、口に出しちゃうところがあたしだなって思う。だって我慢できないんだもん。
「あぁ…」
 思い当たった様子で、佐伯さんは苦笑する。
佐伯さんの…彼女?」
 佐伯さんがバツ1だっていうのは知ってる。だから彼女が居たって不思議じゃない。あたしに教えてなくたって問題も何も無い…んだけど。
「いや…そういう訳でもないな」
 すっと身体を離して、佐伯さんは窓近くの椅子に座った。
 あたしも向かい側に腰を下ろす。
「たまたま知り合ってね、一緒に散歩していた…ところかな」
「散歩?」
 話しながら、佐伯さんは煙草に火をつける。
 あんなにくっついて歩いていて、あれがたまたま知り合った人なの?
 自分だって佐伯さんと旅先で知り合って、その日のうちにしちゃったのは棚に上げてそう思う。
「うん…あれは理香子とは別だから」
「別って?」
 つい言葉が尖ってしまう。
「別の世界の人…って言っても分からないか…」
 ふぅっと煙をひとつ吐き出して、佐伯さんがじっとあたしを見つめる。今までに見たことが無いような真面目な顔。この話題、あんまり追求しちゃいけないのかな。
「うん、分かんない」
「うーん……貞操帯って分かる?」
 ……?
 いきなり話が飛んだような…?。
「この前、あるお店に行ってね、彼女はたまたまそこで隣に座った人なんだけれど…」
 言葉を選びながら、話している感じ。
「前と後ろにバイブを装着出来る貞操帯っていう下着があってね…」
「うん…」
 話の繋がりがよく見えない。
「それを着けて散歩をさせて欲しいってねだられたんで、お付き合いした」
 はぁ?
 多分あたし、ぽかんと口を開けていたと思う。
 初対面の人にそんなこと頼むって、ありえなくない?
「あぁ、あのね、そういうお店なんだ」
 あたしの顔色を読んで、佐伯さんが説明を付け加える。
「理香子は俺がバツ1なのは知ってるよね?」
「う…うん…」
離婚した一番の原因は、俺にそういう趣味があったことなんだ。」
「うん…」
女性拘束したり…嬲ったり…だね。で、そういう嗜好の人が集まる店に出入りしていて、たまたま隣に座った人に…って訳」
「ふぅん…」
 何て答えて良いのか分からない。うん…Sっぽいとは思ってた。でも…
「驚いた?」
「んー…意外ではないけど…」
 口数が減ったあたしを見つめて
「理香子に無理強いしないから大丈夫だよ」
 佐伯さんは苦笑した。
「一応、彼女のことを説明しただけだから」
彼女』って言葉に忘れていたムカが甦る。
「あんまり…わかんないんだけど…」
 ふくれて答えると
「説明しづらいんだけどね、恋愛感情とそういう嗜好は必ずしも一致しないっていうことかな」
 恋愛感情?あたしにはあるのかな?
「理香子とそういう遊び、出来ないだろ?」
 じっと見つめられる。
 そんなこと聞かれても、返事に困る。
「またあの人と『お散歩』するの?」
 困るから、質問で返してみる。
「そうだなぁ…正直言うとそんなに好みでもなかったんだけどね。また他の人とするかもしれないし…」
「ふぅん…」
 そういうのってなんか嫌。
「嫌?」
 聞かれて、思わず頷いちゃう。あたしに、そんなこと言う権利無いのに。
「他の人と…そういうことしないで……」
 佐伯さんが、すごく真面目な顔になる。
「理香子となら、していいの?」
 頭に、血が上る。ドクドクって心臓の音が聞こえる気がする。
 一昨日見た、佐伯さんと女性の姿が頭をよぎる。
「……うん」
 頷いちゃって…いいのかな。
 頭の奥の方に、無理だよって思ってる自分がいるのに。
「可愛いね。理香子
 佐伯さんは破顔すると、手を伸ばしてくしゃっとあたしの頭を撫でた。
「無理しなくていいよ」
 諦めたように言われると、なんだか悔しくて
「無理してないよ」
 言い返すと、佐伯さんがくすっと笑う。そういう時って悪戯っ子みたいに見える。
「じゃあ、試してみる?」
「えっ…」
 あんまりあたしが焦ったみたいに見えたんだと思う。
「あ、いや、散歩じゃないけどね…」
 手を振って否定した後、佐伯さんはすっと目を細め吸っていた煙草を灰皿に押し付けて消した。
「立ってごらん。理香子
 笑顔が消えて口調が変わる。あたしの胸の奥でドクンと鼓動がひとつ鳴った。


「ぇ……」
 少し、迷っていると
「立って。返事は『はい』だよ。理香子
「は…はい…」
 いつもとぜんぜん口調が違う。あたしがのろのろと立ち上がると
「脱ぎなさい。ゆっくり、俺に見せつけるように…」
 佐伯さんが命令する。だめ…佐伯さんに命令されると…じわって濡れちゃう。
「ぇ……でも…」
 窓が近いから躊躇する。カーテンは開いているし、窓の外には離れているとはいえオフィスが入ってるビルもある。
「ここで脱ぐのは、やっぱり理香子には無理かな?」
彼女』には出来たのに…って言われたような気がしちゃう。
 あたし、ブラウスボタンを上からひとつずつ外し始める。
 頬が熱い。
 一昨日見た人に張り合っているだけのような気もする。
 ゆったりとソファに座って、佐伯さんはじっと見てる。
 ひとつ、ふたつ、ボタンを外して、外し終わったブラウスを床に落とす。
 今日のブラはこの間買ったばかりの、白にピンクリボンが着いたデザイン
 こんな風に見られるのなら、もっと大人っぽいのにすれば良かった。
スカートも脱いで」
 ホックを外し、ファスナーを下ろすと、タイトスカートはすとんと床に落ちる。
 ブラとお揃いのショーツ。窓の向こうが気になる。もし誰かが見てたらって思うと、そっちを向くことも出来ない。
恥ずかしいカーテン閉めようか?」
 見透かしたように佐伯さんが言う。
 あの人は、こんな風に佐伯さんに命令されて、服を脱いで、裸になって…それからどんなことをしたんだろう。
 背中に手を回して、ブラを外す。
 表情を変えずに見つめながら、佐伯さんはあの人とあたしを比べたりしてるのかな。
 Cカップのあたしより、あの人の方が大きくて好きだったりするのかも。
「全部脱いでごらん?」
 命令したあとで佐伯さんは立ち上がって、冷蔵庫からカクテルの小瓶とグラスを持って来る。
 ストッキングを脱いで…屈みこんでショーツを脱いで…恥ずかしさと、嫉妬と、いろんな感情で頭の中がぐちゃぐちゃしてくる。
「全部脱いだら、ご挨拶だよ。理香子
「挨拶?」
≪つづく≫

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