短編小説・・・１０

髪の長い女・・・俺はそこに食いついた。
「彼女の勤め先とかわかりますか？」
「お店に行けばわかるわよ。確か名刺もらってると思うし、連れてきたのが、その娘の上司だから。多分、赤木会計事務所の娘よ。」
「ぜひ住所を教えてください！」
「あ～ら、だったら今からお店行く？新宿三丁目のはずれだけど。」
はやる気持ちを抑えながら素早く会計を済まし、タクシーに乗った。
「まだ開店前じゃないのにね・・」と言いながらも一生懸命探してくれた。不精なタイプなのかもしれない。キチンと整理されて無い名刺の束から一枚一枚探っていく。話半分だと思ったが、意外に繁盛しているみたいだ。
「あったわよ！！これ。」
渡された名刺を見て手帳に素早く住所・電話番号をメモして、お礼もそこそこに店を出る。遠くから、
「今度は飲みに来てね！いい娘照会するわよ！」という声を背中で聞きながら素早くタクシーを拾う。５時ぎりぎりだが、まだ間に合うかもしれない。タクシーの中から電話を入れて確認をする。
電話に若い声の女性が・・その女性こそ目指す相手だった。
こちらの自己紹介をして、すぐに話を聞きたいと伝えると
「今日は母の誕生日なんです。よろしければ明日会社が休みですから家の近くの喫茶店でどうですか？」
そう相手から告げられた。刑事に休みもくそもない。時間の約束と待ち合わせ場所を確認してタクシーをＵターンさせた。
ただ、どうしてこんなに素直に話に応じるのか・・少し疑問ではあるが。