短編小説・・・６

司法解剖の結果から意外なことがわかった。ガイシャが死ぬ直前に睡眠薬を服用していた。それは致死量には到底満たないが、アルコールも一緒に検出されている。意識朦朧にはなるだろう、とのことだった。
これで益々わからなくなった。自殺の線もあるのか？自殺ならどうしてこんな方法をとったのか。
捜査会議が開かれた。自他殺両面で追うことになった。
現場付近の目撃者捜しと、交友関係の洗い直し。
俺と福永は交友関係の洗い直しを担当することになった。
もし自殺なら、奥さんが何らかの理由を知っているかもしれない。とりあえず司法解剖が終わったので、遺体を返して先方の都合に合わせてから会おう。
その前に外堀から固めていこう。まずは同僚、それから同級生、友人・・なんでもいいから当たって砕けろ精神でいく。
翌日、もう一度勤め先の銀行を訪ね、一番仲のよかった同僚を尋ねる。
そうすると彼とペアを組んで営業に回っていた後輩の岩田氏と別部署だが彼とは同期入社で、たまに飲み歩いていたという内田氏を紹介してもらった。
岩田はガイシャとは１０以上違うだろう。出世欲満々のビジネスマンに見える。それでも彼が新入社員の時は随分面倒を見てもらったという。
岩田はガイシャに若者の考え方、遊び、そういったものを教えたという。そのたびに笑顔でウンウンとうなずいて応えてくれたという。
携帯メールも彼に教わったらしい。
女性関係は？という問いには、あの人はただのいいおじさんで、同じ課の女の子が結婚退職する日に、さりげなく彼女の自宅に花を贈ったという。