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うしろ向いて生きよう

2008年04月13日 12:37

うしろ向いて生きよう

逆光の木漏れ日が
背後の地面にぽつぽつと白い花を落とし
グリーンワンピース
白いフリルスリーブのシャツ
垂れ耳の犬の顔を模した紅い靴
生えそろった歯の白さが
微笑んだ唇からこぼれている

その幼子がおぼつかない足取りで歩いた林は今、芝生が植え替えられタイルの貼られた舗道が引かれ、どうやらそれはホームレス締め出しのためだろう、ごろりと横になったり青いテントを張ったりが難しそうなアップダウンをつけられた、いったいどういう目的の土地なんだかよくわからない空間になっていて、その写真の記憶がよみがえった父は、彼女が立っていた場所辺りに見当をつけて、写真を撮ろうとすると、いかにもあからさまにレンズを睨めつけるような視線を向けて、はぁこれがあの笑顔の幼子なのかと、苦笑いでその場をやりすごし、アルバムを繰って、定かではなかった場所を確認するために写真を探すと、付随するさまざまな記憶がよみがえってきて、この十年をかけて、崩れていったもの、喪ったこと、消え去ってしまった何か、そんなものが一挙に姿を現して、ボクをなじるかのように、さまざまな問いかけをしてくる。

 ボクはいったい、何を目指していたのだろう?わかんないなぁ・・・
少なくともこんなに我慢を重ねてきたという自覚だけはもっていたり、やりたいことをやらず、手に入れたいものに目をつぶり、自分を殺して生きてきた、なんていう被害者意識というか、非・達成感というか、それだけはもっていて、それは別に誰に文句を言う筋合いではないのだけれど、要はなんも手に入れられなかったし、近づけもしなかった時間を、どう断罪すべきなのか、途方にくれているのだ。

 人間、いつも前向きでいられるわけぢゃないし、少なくとも自分はそうで。
ましてやそれを、自分の外側から要求されるとしたら、やっぱりそれは相当な抵抗を示したいわけで。 全然、なっとくしないだろうし、むしろそっぽを向いてしまう可能性が高いとは思う。
 なにも過去にすがって生きようというわけではなくて、前を向かない人生、もといた場所よりひどいところを好き好んで選んでいくという生き方だって、べつに人に迷惑をかけないでいるかぎり、指弾される筋合いはない。
 いいではないか、そんなにがんばんなくたって。
 昔の記憶の中をさまよっていたいのなら、したっていいと思うし。

 世の中だって、きっとそのほうがいい。
そういう思いを抱いているひとが、一人でも増えるほうが、世の中平和に違いない。
 うしろむいて、いきよう。
 あしたも、
 あさっても・・・

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