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成程話:目の前の一人を喜ばせる
2012年09月01日 10:45
小山薫堂氏の心に響く言葉より
そもそも僕は[芸術家]ではないので、自分の中からわき出てくる何かを表現したいとか、自分の魂を外に発散したいといった欲求は全くないんですよ。
それよりも、常に誰かに喜んでもらうことが嬉しい。
それだけなんですね。
その時の[誰か]というのは不特定多数ではなく、顔の見える明確なターゲットです。
あの人を笑顔にする為、あの人を喜ばせる為に物を書こう、作ろうと思う。
そういう意味ではビジネスの世界ではよくマーケティング調査をして、どれだけ多くの人にそれを届けられるか、どれだけの人がそこに反応するかといったことを分析すると思うのですが、僕はそれもあまり考えていないんです。
『おくりびと』の脚本を書いていた時も、世の中に何かを提示したいとか、100万人に向けて書こうという気持ちは全くありませんでした。
僕がまず考えたのは、やはり、声をかけてくれたプロデューサーの中沢敏明さんの期待に応えなければいけないということ。
映画の脚本を手がけるの初めてだったのですが、中沢さんは僕の著書を何冊も読んだ上で依頼することを決断して下さったそうです。
ですから、兎に角僕は中沢さんに「成程、こう来たか!」「わあ、頼んでよかったな」と言わせたかった。
それが自分の最大のモチベーションにもなっていたんですよね。
もっと身近な例で言うと、僕は雑誌の連載を幾つか持っているのですが、そこでも決して読者をあっと言わせようとは考えていない。
それよりも、僕の原稿を最初に読む編集者をどう唸らせるか。
或いは僕の原稿を担当の編集者に転送するうちのスタッフがどう反応するか。
そこに最初のモチベーションがあるんですね。
やはり、自分の中では見えない相手の称讃を得るよりは自分に近い人に喜んで貰いたいという思いがありますし、或いはそれによって人をどれだけ幸せにできるかが重要なのです。
目に見える相手をターゲットにした方が結果的に仕上がる物より明確でシャープになるものです。
『小山薫堂幸せの仕事術』NHK出版
『近き者説(よろこ)び、遠き者来(きた)る』(論語)
政治の要諦(ようてい)は、まず身近な者を喜ばせることにある。そうすれば、その噂を聞いて遠くからその国に多くの人が集まってくる。これは政治の話だけでなく、商売や人間関係にも言えること。身近な家族や友人を喜ばせることができない人は、見ず知らずの人やお客さんを喜ばせることはできない。「一人光る みな光る 何も彼も光る」(陶芸家・河井寛次郎)
一つ光れば、みな光る。一つのことを極めれば、全てに通じる真理を手に入れられる。まず、目の前の一人を喜ばせることができる人でありたいな。
このウラログへのコメント
-Q-さん:そうそう。自分のしたことで喜んでくれる人がいたら嬉しい
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