その声を聞くだけで...

その頃の貴女、
その頃の僕に
....戻り

人混みに立ち混り
聞こえて来た声の
そのままに

おきゃんで、
少しかすれて
おばさんになるだろう
声の...

夏休みに
ジャガイモの転がる
土間に...

麻袋から
はみでたジャガイモの
いくつか蹴飛ばして、

長ネギの束の
青臭い、店を閉めた
八百屋の奥の

うす暗い部屋の
明かりに背筋を伸ばした
貴女の笑い声...

はにかんで
それ程、話したとも
思えないけど、

目敏く気遣い、
間に入り込み
制止したおばさんが、
仏になって
出会わせてくれた
黒服で...

出会う外
なかったのか
聞き分けた、その声の
やさしく湿り...

そのままに
麻袋からはみ出た
ジャガイモのままに、

聞き分けて、
人は声......
線香の煙の向こうに
消えてさえ.....

おばさんの声、
貴女の声...
人は声...

声明の続く間に、
何を言い、語ろうとした
事よりも、

その
聞き分けた声の
湿り...

∴ ∴

サイトの人には声がない。聞き分けて区別する術もない。