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ペテン師の夏・終改め追

2008年03月28日 00:27

そして 最後の海

ちえこの住まいは実は遠くはなかった
3駅ほどのところに住んでいた
後に駅で言えばJRと地下鉄乗り換えで3駅と
変わりはないが徒歩30分のところに引っ越してきたのだが
今 思ったら もしかしたらこれ わたしのため?

ちょうど使用沿線が同じだったのでホームで待ち合わせをした

地味な格好で彼女はいた 地味だった

ここ数回 綺麗 可愛い そういうメンバー続きだったせいか

はっきり言って 見劣りするのは否定出来ない

もし 評価をつけるなら 並の中か下

雰囲気はやや暗し 当時の関係者の中では特殊な存在だった

いや 普通な状況では この子が普通なんだと思う

ただ気になっていた だから本命になったのだが

よく言われた 何故あんな暗い子?

なんでこんな冴えない子を?

ただ 二人でいるところを見た者からは評価は一転する

なんか似合ってる 和やかな雰囲気だね と

多分 彼女はわたしの救いだったんだろう

なんとなく落ちつける存在

まあ その救いを後々容赦なく壊していくのだが

謝る人は多々いるが 一人選べと言われれば彼女が筆頭だろう

願わくばわたしたちに弄ばれた日々が

いい思い出になってることを願いたい

わたしは予定より早く起きたので

玉子焼きとウィンナーを焼いたものをタッパに詰め

待ち合わせの駅へ向かった

予定より30分以上早くついたので売店でビールを買う

一口飲んだところで気になるものを見つける

待ち合わせにはまだ30分はある

しかも わたしより3駅遠いはずである

でも いる しかも どう見てもわたしより先に着いてる感じ

考えたら時間にルーズなわたしたちの中で

彼女だけは待ち合わせの前に来てた気がする



後に それを知った事件があった

とはいえ 彼女のあずかり知らぬ話だが

他の女とホテル帰りに駅でいちゃついてた視線の先に彼女がいた

彼女は気づいてなかったが 少し焦ったことがあった

待ち合わせは12時 11時20分頃だったか

わたしのアパートの駅まで10分弱そして徒歩5分

着替えて戻ってくるには十分に間に合う

時間いっぱいまで粘っていたのだが

もし ここでかち合せしてたら 面倒なことだった

もめることはない 彼女が泣くだけの話だが

泣かれても面倒 その後 待ち合わせには細心の注意を払うようにはした



しばらく暇つぶしに ちえこを観察していた

なんか楽しそうに見える 

時計を気にしながら 今か今かと誰かを待ってる

見てて飽きない 玉子焼きをつまみビールを飲み干し

2本目を購入したところで重大なことを思い出す

彼女が待ってる相手 わたしだ

買っちゃったのは仕方ないので 飲みながら彼女の元へ向かった

「おはよう 早いね」

「あ おはよう やが....」

ビール片手に玉子焼きを食べるわたしに驚いたようだ

「あ これね 早く着いたんで一杯飲んでたんだ」

「あ そ、そうなんだ」

「そしたら もう来てるし 早いんだね」

「うん 早く起きちゃったから来ちゃったの」

「そうだね 10分くらい前 もういたよね」

「うん えっ 何で知ってるの?」

「見てたから」

「えっ 」

「見てて飽きなかったから 眺めてた」

「それって ひどい」

「あ ごめんよ なんか見とれてたっていうか」

「えっ?」

「食べる?」

目の前に玉子焼きを差し出す

「え、あ、いただきます」

ちえこは玉子焼きをひとつ口に含む

「え、美味しい...」

「そう?」

「どこで買ったの?」

「作った」

「え、?」

「わたしが作ったんだが なにか?」

「えー やがみくん 料理出来るの?」

「まあ 普通には出来る」

「なんで? なんで出来るの?」

「なんでと言われても困るが ひとり暮らしだし」

「そうだけど」

「ついで言えば 高校の時 弁当作って持っててたし」

「うそっ!」

小学生の時からやってるが」

「すごい」

そう言い ちえこは 紙袋をそっと後ろに隠す

「それは?」

「あ なんでもないの」

「もしかして何か作ってきた?」

「あ でも えっと」

「さすが気がきくね いたがきさん」

「え でも」

「そういうとこ好きだよ」

「えっ」その言葉に彼女が固まる

「何作ってきたの?」

「玉子焼きとサラダアスパラベーコン巻き あとサンドウィッチ

「まめだ そんなに?」

「美味しくないかも....」

「味見しようか?」

「え でも...」

「誰よりも一番に食べたいと思うのはわがまま?」

「え そんな やがみくんのために作ったんだし うれしい..」

「うれしいこと言ってくれる」彼女の髪に手を差し込む

「や、やだ あたし何言ってるんだろ」

ちえこはわたしのことが好きである

それは もう露骨にわかる

落ちたとかそういう以前の問題でとてもわかりやすい

わかってて彼女を玩んでるわけなんだが

あとは 彼女トラウマ それさえクリアすればいいわけ

実は あらゆる想定をして 数多くの伏線は用意してある

「玉子焼きもらい」そう言って口にする

じっとそれを見るちえこ

あまい....」

実はその当時まで知らなかったんだが

玉子焼きに砂糖入れるってのもあったんだね

塩 醤油 味噌ってパターンはあったが

うちの家庭では 砂糖はなかった

ついでに寿司屋のタマゴも甘いのだが

寿司屋に行くと タコ イカ トロしか食べたことがない

弟は イクラ 数の子 トロだった

こう書くと お金持ち?と思うかもしれないが

そうではない 詳しくは言えないが

うちの母は 寿司屋を自腹で食べたことはない

そうとだけ言っておこう

実際は 存在する立派な玉子焼きなのだろうが

わたしてきにはありえない玉子焼きだった

でもまあ 不味くはない むしろ美味いかも

しかし 砂糖はありえない 当時はそう思った

しかし 彼女の泣きそうな顔を見て ありえないとは言えない

砂糖の入った玉子焼きって初めてだ」

「ごめんなさい 」

「いや 謝らないでも 不味くないし」

「でも でも...」

半泣きになってるし この子はこういう性格なんだろう

本当に迷ってしまう 放っていけないのだが壊したくもなる

「また 今度作ってきてよ」

「え でも...」

「これが君の味でしょ」

「うん...」

「君の全部味わいたいね」

「や やだ やがみくん」彼女は顔を赤らめる

「なんか変な意味にとってない?」

「いやだ あたし そんな...」顔が真っ赤だった

まあ実際 そういう意味で言ったのだけど

あまりに昔なので記憶が定かではないが

彼女の反応の面白さに かなりの時間

彼女をからかってた記憶がある

あまりにもわかりやすい反応だったもので



そして 時間が過ぎてるのに気づき 

わたしたちは海へ向かった



*『ペテン師の夏・終』なはずなのだが

ここまで書きながら 今だ 海にすらついてない

思う 多分 今回じゃ収まらない

『・終 改め追』に変えるしかない



途中の駅から ちえこの友人にて

後の松山彼女となる みしまかなが乗り込んできた

「あ やがみくん ちえこ 」

「あ かな」

「誰?」

「あ はじめまして みしまかなです」

はじめまして やがみです」

「はい 存じ上げてます」

「そうですか 存じ上げられてますか」

「ええ お噂は色々と」

「ロクでもない噂なんでしょうね」

「ええ とても素敵に最低な噂です」

「困ったもんです」

自業自得です」

「それは手厳しいお言葉で」

「言いたくもなります」

「噂はあくまで噂ですから」

事実 そうだ 噂じゃわたしはかなりなえっち上手

しかし この時点じゃ 童貞

噂なんかあてにはならない

まあ それ以外は 噂通りではあるのだが

「火の無いところにっていうし」

「実際 目にしないとわかりませんよ」

「まあ そうですけど」

「身をもって試したらいかがですか?」

「素敵な提案だけど 場はわきまえましょう」

すっかりちえこの存在を忘れてたわたしだった

涙目でわたしとかなを見てる

「ああ ちえこ 冗談だってば 」

ある意味 面倒な女ではある

考えれば 面倒な女を好んでチョイスしてしまう癖

癖というべきか あるいは運気とでもいうか

この時 すでにそういう傾向にあったのだろう

ちえこを軽く引き寄せる

「泣くなよ 泣く子は嫌いだよ」

「でも だって...」

軽くキスをする さすがに電車内だ 濃厚なのはまずい

「や、やがみく..」

もう一回する あ 思い出した

考えたら これ ちえこと初のキス

出会って三ヶ月 抱きしめたり散々しながらこれが初

て ことは ちえこにとってやがみとの初キスは電車の中

しかも かなり適当キス  よかったのだろうか

「人が...」

「気にするな」

「でも...」

「いやだった?」

「そうじゃないけど...」

「宣言だと思ってくれればいい」

「うれしい...けど..あたし...」

あの件だなと直感した とりあえず口をふさぐ

「海の後 ゆっくり話そう」

「でも...」

「それまでは 楽しむ いいね」

「うん」

今夜は長い夜になりそうだと思った

ふと 横を見ると かなの姿がない

心配そうにこちらを見ている

が したたかな女だと思った

キスした瞬間 数歩離脱し他人のふりを決め込んでやがる

いい性格してるなと思った

まあ そうじゃあきゃ 松山の相手など務まるわけがない

まだ 彼女もわたしたちも 翌年 ぐちゃぐちゃな関係に

なることなど予測もしていない頃だった


途中に書いたように 収まりそうにない

今度こそ完結『ペテン師の夏・終』に続く

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