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ペテン師の夏・序

2008年03月23日 20:39

ちょっと内容が重くなってきたので
気分転換に おちゃらけた話いきます
長いので 多分3部作
 

その日 田村に呼ばれ

わたしたちは大学近くの喫茶店にいた

「...という予定なんだけど どうかな」

田村は聞いた

「いいじゃん それえ 夏の恋だぁ」

能天気松山は喜ぶ

わたしとて とても素敵な提案であり

是非にといいたい気分ではあった

しかし大きな不安があった

松山は 喜びはしゃいでいるが


「ちょっと聞きたい」

「なんだい?」

「一緒にいく子たちはどういう方面だ?」

「どういう方面って?」

サークルの仲間とか お前のお相手のその友人とか」

「ああ そういうことね」

「5、6人はお相手だけど 他はまだ手付かず」

「まだ手付かずっていずれはってことか」

「まあ そうなるかな」

「まったく...まて」

「なに?」

「5、6人って何だ?」

「あ ごめん 説明不足だった 4回行くから」

「じゃ 12人?」


「あ 10人なんだけど 最後困ってね」

「ふむ」

「3、3、3で行くと最後1でさ どうしようかなと」

「あ 最後の2人 こっちで用意していいか?」

「あ それ助かるよ」

「それでさ ひとつ聞いていいか?」

「なんだい?」

「君は経験者で数ヶ月ながらかなりなもんだって噂は聞いた」

「あはははは」

「で、わたしらは 実は童貞 」

「ああ そうだったね」

「そうだったねって あのさ うちらってどう思われてるのさ」

「うーん どうだろ たださ 僕さえも君ら童貞って忘れてたからねえ」

「まじかよ」

「特にやがみくんは すごいって思われてるんじゃないの」

「なんで?」

「僕がこうなったキッカケはやがみ君だって言ったから」

「....... 嘘じゃないが....」

こいつ わざとやってるなと思った

「といかく 松山のことは頼んだ うちはなんとかする」

「そう言ってくれると思ったよ」



そしわたしは 海にいくメンバーの名前と

どの回に誰が田村のメインなのかを聞いた

そこで気づいたのだが 田村 やつは相手が重複したとき

わたし もしくは松山に押し付けることで

キープする気だったんじゃないかと

まんまと田村の策略に乗せられたと思いながら

どう そこを切り抜けるか わたしは考えることにした



まずは戦力比較だ そう思って ながさわようこを探した

ながさわようこ 田村の初めての女 

今の田村を作り上げた女と言えよう

最近 風俗バイトを始めたとのことで

あまり大学には来ていないが

今日は見かけたとの情報を元に彼女を探した

確かめなければならないことがある

田村とわたし ついでに松山

容姿だけなら 松山が上だろう 

田村とわたしは まあ 同じくらいと思う

好みによるが 容姿は互角

続いて 話術 これは うぬぼれではないが わたしに分がある

しかし ここらは今回は大した問題ではない

経験値 これは もう言うまでもない 田村圧勝

こっちはゼロ ナッシング やつは少なく見積もっても7~8人

加えてやつにはもうひとつ武器がある

やつのはでかい とても立派なものだと聞く

ながさわようこは それを実際に見て 田村に興味を抱いた

その立派さは それが全てを物語ってる

『あれは大きさじゃないのよね』 

きょうこさんが言ってたのを思い出す

ただ 彼女はこうも言ってた

『形というか形状っていうかな あと固さかな』

『よく わからん世界の話だが そうなのか?』

『うーん これは男の人にはわからない話かもね』

『じゃ 僕はどうなんだろ?』

『うーん あたしが見たのって小学生の頃だし 見てあげようか?』

『いや 遠慮します』

見といてもらっときゃよかったかなと思った

『もしさ 大きくて形もいいって人がいたらすごいかもね』

そう言ってた記憶がある

ながさわようこは言ってた

『大きいだけじゃなく いい感じなのよ』

このふたつの言葉を総合すると 田村 やつは完璧じゃないか

まず このテリトリーになったら 終わりだ

少なくとも わたしや松山は見掛け倒しの評価をくだされる

田村のせいでハードルが えらく高くなってやがる



「あ やがみくん」

その声に立ち止まるとそこには いたがきちえこがいた

「あ いたがきさん いいとこに ながさわさん知らない?」

「えっと ながさわさん?」

「そう」

「さっき 視覚室の方にいた気が」

「そっか ありがと」

急がねばと思ったが ひとつ用事を思い出した

「あ いたがきさん」

「はい?」

「いきなりで悪いけど 今度海に行かない?」

「えっ うみ....」

「うん あ 田村松山も行くんだけど よかったらどうかな?」

「えっと4人?」

「いや 田村彼女連れてきて 他に誰かいないかなってなってね

じゃ わたしが探してくるってなったんだ」

「やがみくんが?」

「そう あ あとさ 松山と行きたいって子誰かないかな?」

「それって やがみくんの相手って」

「いや?」

「そ そうじゃないけど なんであたし....」

「覚えてる最初の飲み会のとき」

「うん」

「なんか輪に入れないって感じでぽつんと」

「やがみくんが声かけてくれたんだよね」

「そうそう」

「優しいなって思ったけど やがみくん誰にでも優しいし」

「うん そうだよ」

「そうなんだよね......」

「その次の飲み会 君の横に誰がいた」

「やがみくん....」

「じゃ その次のとき わたしはどこにいた?」

「わたしの隣.....」

「酒は好きだけど騒がしいの嫌いなんだ」

「えっ」

「でも 参加する 自然と落ち着けるとこにいる」

「......やがみくん....」

「それじゃだめ?」

彼女は首を振る

わたしは彼女の頭に軽く手を乗せ撫でる

「一緒に海に行こう」

「はい....」

よし 落ちた そう不謹慎にも思っていた

しかし 人通りのあるところでこれ

はたから見たら口説いてるようにしか

いや 実際 口説いてるんだけど

こういうのを公衆で平然とやってしまう自分がある意味こわい

考えたら自分でもハードルを上げてる気もする

「じゃ 誰か松山相手探しておいてね」

「うん」

軽く彼女を引き寄せる

「じゃ 行くね」耳元で囁く

「はい じゃ また」



わたしは ながさわようこの元へ向かった

「いた ながさわさん」

「あら やがみくん 忙しいわね」
「へっ?」

「なんて名前だっけ あの子」

廊下から中庭が見える そこにまだちえこがいた

「なんか 嬉しそうよあの子」

「あ 海に誘ったからじゃないの?」

「それだけ?」

「まあ ちょっと口説きが入ったかな」

「暗い子よね」

「ま 暗いけど素直なよい子だ」

「ああ 素直な子がやがみくんの毒牙にかかるのか」

「毒牙もかけようがない」

「あれ もしかしてまだ童貞?」

「あんたが田村をあんなんしちゃったからハードル上がっちゃったんだよ」

「あははは じゃ 教えようか?」

「素敵な提案だが 踏ん切りがつかん」

「なんでよ?」

田村と兄弟になるのはいいんだが」

「うん」

「やつが兄弟子になるのが嫌」

「あ そっか そうなるねえ」

「大体 演芸の世界じゃ兄弟子ってのは絶対で

 あ いや それはどうでもいい」

「なんだがわからないけど色々ね」

「うむ それで 頼みがあって来たんだが」

「なになに?」

わたしは彼女を見る

キスしよう」

「はい?」

事情は後で話すから」

「まあ いいけど ここでする?」

「ここでもいいが どっかいいとこある?」

「じゃ ついてきて」

そして彼女についていくと 妙な踊り場みたいなところへ来た

「ここは?」

「さあ なんのスペースか知らないけど よくここ使うから」

「なんに? あ いや いい 聞くだけ野暮ってもんだ」

「あははは やがみくん面白い

「どういたしまして」

「ねえ やがみくん」

「なに?」

童貞よね」

童貞童貞いうなよ」

「あは ごめん でも」

「でも?」

童貞とは思えないほど手際いいから」

「また童貞言った」

「あはは ごめんごめん あははは...」

「まあ キスは教わったから」

「誰に?」

「きょうこさん」

「誰 それ?」

「小中学のとき行ってた飲み屋のホステスさん」

「なんでそんなとこに?」

「まあ 色々と」

「そっか」

彼女の目にかかった前髪をそっとはらう

「うすうす気づいていたが」

「なに?」

「君って綺麗な子だな」

「あははは 真面目な顔で何言ってるのよ」

「いや こういうのは真面目な顔で言うって」

彼女笑顔がとまる そっと唇を重ねる

髪の毛を撫でながらゆっくり離し彼女の顔を見る

そして再び唇を重ねる

そして再び離れる 離れるときに彼女の下唇を挟むように離れる

そして三度唇を重ねる 今度はゆっくりと舌で彼女の下唇を撫でる

少し彼女の首を支えるようにまわした手に力をいれる

呼吸をしようと少し開いた唇にゆっくりと舌を差し込む

ゆっくりとゆっくりと舌をいれていく

彼女の舌先に触れる ゆっくりと戯れるように触れ合い

そしてゆっくりと絡めていく

彼女の肩に置いた手を動かす

バリエーションは3つ 首筋ぞいに動き彼女の頭を包み込むようにするか

背中から腰へそして引き寄せる

今回は3つめ 彼女の腕にそって降りていき彼女の手を握る

ゆっくりと舌を絡めあい そしてゆっくりと唇を離す


「はぁ....」彼女は大きく息を吐いた

「なんかこういうスローキス ひさびさって感じ」

「そう?」

「はじめてえっち教えてくれた人がこんなんだったかなぁ」

「どんな人?」

「お父さんぐらい年上だった」

「きょうこさんも20近く上だった気がする」

「そうなんだ」

あの世代ってこういうキスだったのかな」

「どうだろ だとしたら 今の世代って」

「うん」

「せっかちで悲しいよね」

「そうなのかね」

彼女はわたしを見る

「やがみくんがキスしたがった理由」

「うん」

「わかっちゃったかも」

「ごめん」

「謝らなくっていいって むしろあの子に謝ってよ」

「ああ そうか」

「そうよ 口説いたあとにほかの子とキスなんて」

「やっぱまずいか」

田村君は こんなキスは知らない これでいいかな」

「ああ 助かるよ」

「ほんとに手ほどきいらない」

「今はいいや キスだけでしばらくは持たすから」

「じゃ やがみくんが経験したらしようね」

「うん よろしく」

結局 彼女とはすることはなかった

彼女は 秋には 早々と大学に見切りをつけ

大学に来ることはなかった

そしてこの場所にもくることはなかった



わたしはひとつだけ武器を得た

田村に勝てる唯一の武器

そして あらゆる小細工 策略を駆使した夏が始まった

このウラログへのコメント

  • kana 2008年03月23日 23:48

    スローなキス、kanaも思い出しちゃったぁ♪
    エッチィ気分全開になるようなキスなんだよねぇ

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