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泡沫の夢

2016年06月30日 08:29

泡沫の夢

17時、定時退社。

階段を降りて、駅に歩き電車に乗る。

1度上野で乗り換えて、常磐線に乗車。

1時間少々、揺られて自宅へ帰る。


車内では、読書か音楽鑑賞、あとは少し居眠り


あっという間に地元へ着く。


駅から帰る途中、スーパーに寄り夕飯の材料を買い揃える。

カゴいっぱいに荷物が膨れ上がり

自転車をこぐにも、少々苦労する。




誰もいないアパートに帰りつく。

時間は18時50分、いそいそと夕飯の準備にかかる。


ブリが美味しそうだったので、これを焼く。

焼いている横で、同時にカボチャを煮込む。

栄養バランスを考えて、生野菜サラダにして食卓に咲かせる。


20時少々前、大抵の準備が終わる。


お米を研いで、炊飯器に入れる。


けど、まだ炊かない。



テレビを観てのんびり過ごす。




21時くらい、携帯がメールの着信を知らせる。

「今から帰るよ」

あっけない文章だけのメールに目を通し


炊飯器の「炊飯」スイッチを押す。


お風呂へ行き、湯船にお湯を張る。


冷めてしまったブリやカボチャの煮物を、もう少ししたら電子レンジで温める。








車のエンジン音が聞こえる。

(帰ってきた)合図の、アクセル2回吹かしを耳が捉え

電子レンジで、先ほどのおかずを温め始める。

お風呂場では、いい量のお湯が湯船に貯まっている。




メゾネットタイプのアパート

お部屋から階段を駆け下りる。

サンダルを履いて、玄関を開け

今しがたエンジンの止まった車から降りてくる彼を、待つ。


私「お帰りなさい」


「おっ、ただいま!」


そう言いながら、彼が持つお荷物を受け取る。


「重いから、自分で持つよ」の優しさも嬉しいが


こうやって出迎えるほうが、もっと嬉しいから


私が持つ。




階段を仲良く、手を繋いであがり



私「ご飯が先?お風呂も入れるよ?」



「せっかく温めてくれたんだから、ご飯が先かな」



タイミングよく炊き上がった、炊きたてのご飯をお茶碗によそう。



作業着から香る汗が

頑張って働いてきたのを、私にお知らせする。


私は気にせず、一緒に食卓に並び


仲良く夕飯を食べる。




会社のこと、スーパーでの話、今日見た、変わったものなど


終始笑顔で、くだらない話を延々とする。




「ごちそうさま」と、夕飯をいつも全て平らげてくれる。


私「おそまつさまでした」

と、空いた食器を流し台に運び、洗い物をする。



運ぶのを手伝ってくれるのを制止し


お風呂に入るよう、促す




素直にお風呂に入ってくれる間、急いで洗い物を済ませる。



追いかけるように、私もお風呂に入る。


すでに髪も身体も洗い終え、湯船に浸かる横で


今度は私が髪や身体を洗う。



決まって、湯船で温まるのをやめ


髪を彼は洗ってくれる。



綺麗に流し終えると、慣れた手つきで髪についた水分をふき取り


フックにかけている髪留めを手に取り、私の髪を縛ってくれる。


そのまま、やはり慣れた手つきで身体も洗ってくれる。



私なりの
浮気したりしてないよ

気になるなら、どうぞくまなく調べてください)
サイン



そんなこと何も考えず、ただただ優しく、身体を洗い流してくれる。




仲良く湯船に浸かる。



お湯が溢れ、湯船が狭く感じても

とても幸せ。


さっきあれだけ、食事をしながら話したのに

まだ、話したいことが山のようにある。

次から次へと、口から言葉があふれ出す。


彼の上に乗るように、身をゆだね


お湯の温かさも相まって


幸せさが増す。





お風呂からあがり、バスタオルを彼に渡す。


当たり前のように、私の身体を拭きあげてくれる。


美術品を愛でるように、優しく優しく

髪から脚のつま先まで、丁寧に拭いてくれる。




着替えを済ませ、先ほど食卓を囲んだテーブルに


彼のノートパソコンを置く。


横には、グラスとビールを添える。





彼がお風呂からあがってくる。

タバコに火をつけ、プカプカとくつろぐ横で

私はグラスにビールを注ぐ。



「今日も一日、お疲れ様でした」の言葉を


心の中で唱える。



それを察してなのか


いつも「ありがとう」の言葉と、屈託の無い笑顔を私にくれる。




パソコンで彼がお仕事を始める。


私はテレビをつけ、音量を下げる。

音楽番組バラエティーが観たいけど

邪魔になるから、ニュースチャンネルを合わせる。




「好きなの観ればいいじゃない」

と、気遣い無用の言葉がかかる。


いや、気を遣う。


お仕事の邪魔できない。




大丈夫、俺も耳で聴いて楽しむんだから
好きな番組観ようよ」


そう言ってくれたら、私も気兼ねなく観られる。




しばらくして、向かって90度の位置に座っていた私が


座椅子ソファーを持ちながら、彼の横に移動する。


3人座れる、大きめのカウチタイプ。


お仕事の手を止め、ソファーを整えて横に彼が座る。



お仕事の邪魔はしない。

だから、横に座る私も、彼とはこぶし3つ分の隙間を設ける。


くっつくと、パソコン操作しづらいだろうと思うから。



しばらくすると、パソコンを少しだけ私のほうにずらしてくる。

そして、彼自身が私にピッタリくっつき

私を抱きよせ、私を肩に抱きながらお仕事を再開する。



とても幸せ。


話さなくても、とても幸せ。


24時近く、やっと彼のお仕事が終わる。


聴きなれたXPのシャットダウン音を耳にして

私「お疲れ様でした」と、ねぎらう。



笑顔を向けて、「さて、寝よう」と


私をお姫様抱っこして、寝床へ向かう。



いつ敷いてくれたのか、すでにお布団が整っている。


小さな雛を巣に戻すように、彼は私を優しくお布団に着地させてくれる。




戸締りを確認し、火の元を確認し


お布団に彼が戻ってくる。




大きめの1組の布団で、私たちは寝る。


親に甘える子のように、私は彼に近づき眠る。





夜中に何度も何度も、私にちゃんとお布団がかかっているか

寒い思いはしていないか

確認してくれているのを、私は知っている。


何度も背中に手を回し

お布団がかかってなければ、かけなおし

そのせいで身体が冷えたときも

眠っている私を起こさないよう、優しく温めてくれたことも、知っている。





今日も、彼は優しかった。

昨日も、その前も

出会った日から毎日、

彼が優しくなかった日は、1日たりとて無かった。




だから、明日もきっと優しい。











10年前は、私もこんな毎日を送っていたんですよ




掲載元
フリー素材集より引用(パブリックドメイン
http://free-photos.gatag.net/
ID: 201502221000

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