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趣味は読書、孤独な最低生活者の一日(1)

2014年06月27日 00:34

この話はフィクションです

彼は、今年50歳になった。
両親は既に亡く、兄弟もいない。親戚とは、最後の同居人だった母親が亡くなって、その三回忌を終えた頃から、疎遠になった。30歳の頃だから、もう二十年も消息を知らない。
若い頃は、何度か恋もしたが、結局、結婚しようと思っていた恋人が、不治の病で亡くなってから、女性を愛せなくなっていた。
自暴自棄になり、酒やギャンブル、そして借金で、身動きが取れなくなり、母の存命中から、住んでいた公団アパートも、家賃滞納で強制退去させられ、それ以来、ホームレス同様の、住所不定の生活を続けて来た。
その生活が、今まで何とか続けられた事自体が、奇跡だった。
しかし、この夏、連日の猛暑栄養不足がたたって、熱中症で倒れ、入院した。その、入院費はもちろん払っていないが、ほとんど週に何度かの日払いのアルバイトで食いつないでいた彼も、一週間の入院で、収入が途絶え、本当に困窮した。日払いのアルバイトを始めた頃は、まだ、住所も身分証明もあったのだが、今は、住所もなく保険証も無いので、日払いの仕事にさえ就けない。
入院費は、分割で払うと、空手形を切って、ほおかむりしている。

彼は、退院して、行く所がないので、区立図書館で、暇を潰し、夜は公園で寝ていた。
しかし、無一文なので、二日間図書館の給水機で水を飲んだだけだった。
彼は、限界だった。図書館を出て、駅に隣接する大型スーパーの出入り口に面した休憩所で、途方に暮れながら、休んでいた。
ぼんやり、行き来する普通の人々を眺めていた。その中の主婦の一人が、自動ドアの脇に置かれた大型のマガジンラックから、薄い冊子を取るのを見るとはなしに見ていた。
彼は、のろのろ立ち上がり、マガジンラックから、冊子を一冊取った。無料求人誌だった。
丁寧に読んで、一つの求人を見つけた。
日払い可で、解体現場の片付けの仕事だった。資格も年齢も関係無かった。
暫く、その求人を見つめ、彼は冊子を尻ポケットに突っ込みスーパーを出た。
彼は、決意していた。これから歩いて、数年来会っていない地元の友人を回り、
幾らかの金を借りる事にした。そして、どんな事をしても、このアルバイトをしようと思った。
結果は、五人の旧友の家を回り、中学同級生だった一人から、説教付きで、一万円借り、事情を話して、保険証を借りた。友人は、犯罪になると、散々渋ったが、情に訴えたり、土下座したり、考えつくあらゆる手段を、駆使してやっと説き伏せた。助けてくれなければ、借りた金も返せないとも言った。
携帯電話も持っていないので、疎らになった公衆電話から、求人先に電話をし、何とか面接にこぎつけた。
友人の保険証なので、住所も勤め先も嘘で、更にこの時代に、携帯電話を持っていないのをかなり怪しまれたが、週休二日の一日を、働きたいのだと言ってごまかし、何とか翌日のアルバイトを確保した。
ヘルメットを受け取り、安全靴手袋カッターなどは、自前だと言われ、大型ホームセンターで、作業服を含め、必要なものを買い揃えた。
面接をする前は、友人に借りた一万円で、久々にビールでも飲み、サウナカプセルホテルにでも泊まって、風呂に入りたいと皮算用していたのだが、当てが外れた。それでも何とか、シャワーのある漫画喫茶に泊まった。

つづく

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