成程話:ドジな話を面白おかしく語る

内藤誼人氏の心に響く言葉

不幸とまではいかないが、自分のドジな話を語って聞かせるのもいいアイデアだ。
「どひゃあ～、来る途中に、犬のウンチをふんじゃったよお～」
「お客さんの前で、オナラをしちゃったよお～」
というように、自分のドジ話もやはり、相手を幸せにさせる効果がある。
私達は、ともすると、自分を大きく見せようとして、うまくいった話を中心に相手に語ろうとするものだが、これはよくない。
俗に「隣に蔵建ちゃ、儂（わし）ゃ腹が立つ」といわれるが、私達は他人がうまくいっているのを見るのが、面白くないのである。
だから、口が裂けても、サイドビジネスで月に100万円稼いでいるとか、可愛い恋人ができた等ということを喋ってはならないのである。
「でも、ドジな話などしていたら、自分の評価が下がってしまうのでは?」と心配する方がいらっしゃるかもしれないが、そんなことはない。
自分の“ドジぶり”をアピールするのは、決して悪い作戦ではないのである。
カリフォルニア州立大学のエリオット・アロンソンは全てがパーフェクトの人間を演じるより、コーヒーをこぼしてしまって、新品のスーツをダメにしてしまうような人間の方が、相手には好ましく評価される、ということを確認している。
完璧な人間は、近寄りがたい印象を与える。
ところが、ドジな人間は、とても身近な印象を与え、人に愛されるのである。
「男はつらいよ」シリーズに出てくる寅さんは、毎回、ドジな役回りを演じていたが、だからこそ愛されるキャラクターであった。
雑談の得意な人は「いや～、まいっちゃった」を枕詞にしている人が多い。
彼らは「まいっちゃった」といって、自分のドジな話を面白おかしく語るのである。
私達はそういう話を聞いて、ケタケタと笑わせてもらうのが好きなのだ。
ドジな話をすれば、自分がいかにあけっぴろげで、オープンな性格なのかを相手に伝えることもできる。
隠し事をせず、おおらかな人物であることをアピールできるのである。
普通の人は、自分のドジな話などは、恥ずかしくて隠すものだから、なおさらオープンな人間だと思ってもらえるであろう。

『雑談の達人』大和書房


ドジ話も、失敗談も、それを深刻そうに話をしたら、面白くないどころか周りも暗くなる。
ドジな話は、人一倍、明るく、軽く、話すのがいい。
隙のない人は、なかなか自分の弱みを見せない。
オープンでフランクな人は、自分を大きくみせたり、格好をつけたりはしない。
だから、自分の欠点だろうが、ドジな話も、笑いのネタにすることができる。
松下幸之助翁は、人を採用するときは、「愛嬌」のあるなしを重視したという。
愛嬌とは、「にこやかで可愛げがある」ことや「ひょうきんで憎めない性格」でもあるが、「相手を喜ばすことが好きな人」でもある。
愛嬌たっぷりに、ドジな話をできる人でありたい。