悲しい女

悲しい女をご存じか？

涙を流す女だと思うだろ、ところがギッチョン、違うんだな。

悲しい女は悲しい酒を飲む女だ。酒を飲んだからって涙を流すとはかぎらんだろ。

悲しい酒？
悲しい酒は未練する女が飲む酒だ。男も女も失恋する。
しかし、決まって、女が未練する。未練女になるのだ。

うんで、未練女が酒を飲む、悲しい女に変身する。

この頃当今の女は、未練はなじまない。さばさば。

恋愛はゲームで、次の男になる。次の女になる。

未練？
何のことかわからない。

未練は心を蝕む、未練はまんこまで蝕む。
まんこを蝕む？
そう、誰とでも寝る、未練のゆえ、全部の男を引き受ける。

未練女とまんこはできるが、心までまんこできない。
未練女とまんこすると、男も女も芯から冷える。

うんで、未練女は酒で体を暖める。

悲しい女が誕生する。

悲しい女は美人である。

美人はプライドが普通の女より百倍、千倍、万倍高いから、
未練女はプライドがずたずたである。
うんだから、悲しい女には悲しさに凄みがある。
誰も近づけない。

美人でないおまえは、悲しい女になる資格がない。
その代わり、笑える女になる。自分を笑って簡単に未練を乗り切る。

なんで悲しい女はイイの？

カウンターの端にすわる悲しい女は、人知れず店の注目を集める。
一目、悲しい女をみたさに男どもは群居する。

店は繁盛する。

カンター越しに悲しい女の、ひとしずくの涙を見れば、男どもは全員、発射する。

うんで、両目から二しずくの涙を出し終えた悲しい女は、静かに店を後にする。
発射し終えた男どもは、痙攣して止まない。

悲しい女は女の生きた芸術である。

笑える女は女のマンザイである。
マンザイで女は未練を自分で癒やす。

悲しい女の未練は自分にも誰にも癒やせない。

癒やせるのは、悲しい死である。

今時未練なんぞ、流行らない、未練なんて死語寸前だ。
おまえが未練？それはおまえの試練だろ。

試練に勝てば笑える女に変身する。

悲しい女と笑える女は背中合わせだ。

どっちを取る。

であるから、悲しい女が店を出るとき、男どもは抜いてもらったお礼に、
敬意を表して、絨毯を敷いて埃を取り払う。

悲しい女は一途に東尋坊へと向かう。
笑える女は一途にヨシモトへと向かう。


オレか、悲しい男でなく笑える男だ、へらへら、へろへろ。