伝説の来栖君④

かつて、給湯室にて～


来栖君「イチゴ先輩、みなさんのお茶ですか？」

私「そうだよ～（みんなのお茶を淹れながら）」

来栖君「じゃあ、僕が持っていきます」

私「よろしく～」

来栖君「はい」

そう返事した来栖君、左目はしっかり私を見ているのですが

右目は明後日の方を向いてました。


（ああ、斜視ってやつなんだな）

と気づいた私は

本人が気にしてるかもしれないので、一切そのことに触れず。



～数週間後～


広報部の人が北海道に出張し、お土産を買ってきてくれて

我が課で配ってくれてたとき



来栖君「あの、イチゴ先輩」

私「何？」

来栖君「あの、あの方なんですけど」

私「広報の佐々木さん（仮名）？」

来栖君「佐々木さんっておっしゃるんですか？」

私「お？興味持ったの？」

私「佐々木さんは独身（女性）だよ～。私の5つくらい上で～、富山とか石川のほうの出身だったかな」

来栖君「いや、そういうわけじゃなくて」

私「違うの？佐々木さんお料理が上手だって話だぜ～」
（さり気に勧めてみる）

来栖君「いや、あの、目が・・・」

私「目がどうしたの？」

来栖君「あの、右目と左目で見てる方向が違うなって。右の眼は僕を見てたんですけど、左が違う方
見てて、ちょっと怖くて」

来栖君「あれって、そういう病気なんですか？」


ええっ！！？


お前がなぜ、それを言えるの


私「えっ？来栖君・・・斜視って知ってる？」

来栖君「あれ、斜視っていう病気なんですか？」

そう言う来栖君の右目は、違う方向を向いている
（左目は私を見ている）

私「あのね、病気だとかそういうんじゃないんだけどさ」

来栖君「小学校でも、同級生に似たような子がいまして・・・怖いですよね」

私「何でそういう事言えるの？」

来栖君「いや、馬鹿にしてるとかじゃないですよ」

私「そうじゃなくてね」

来栖君「はい？」

私「ん～とだね、君はだね、眼科に行ったことあるかい？」

来栖君「あります。コンタクトの処方箋で」

私「そうか、じゃあ、君のご両親は君の目について、何かしら助言したことは無いかね？」

来栖君「いや・・・特には」

私「・・・そうか」

来栖君「何かあるんですか？」

私「ちょっと待ってて」



～管財からデジカメを借りてきた私～

私「来栖君、こっち見て～」

来栖君「はい？」

パシャ（撮影した音）



私「来栖君、ちょっとこれ見てみようか」

来栖君「何ですか？・・・僕が写ってますね」

私「さて、来栖君の目に注目してみましょう」

来栖君「えっ？何かありますか？」

私「右目と左目で、違いがないかな？」

来栖君「・・・いや、特には」

私「そんなこと無いよ！君、斜視だよ！！」

来栖君「えっ！！？僕、そんな病気じゃないですよ！」

私「斜視は病気じゃないよ！そして、君自身が斜視なのに佐々木さんに”怖い”って、あれ何だよ！！？」

来栖君「僕は斜視じゃないですって！」

私「どっからどう見ても、左目はカメラ向いてんのに
右目は課長の席の方（写真を見てかなり左側、外のほう）向いてるよ！！」

来栖君「・・・そう・・・ですかね？」

私「あのね、斜視をバカにしてるわけじゃないのよ」

来栖君「はい」

私「自分がそうなのに、人の事を言うのは良くないよ」

来栖君「・・・はい」

私「今まで、自分で気づかなかったの？」

来栖君「はい、気づきませんでした」

私「お父さんとかお母さんとか、何も言ってくれたりしないの？」

来栖君「そうですね、何も」

私「そうか～」

来栖君「もしかして、僕の両親って優しいので
僕が傷つくと思って言わなかったのかもしれません」

私「何で両親と自分のことは、そうポジティブに考えられるのに
佐々木さんの斜視のことはオブラートに包まず私に言ってきたの？」

来栖君「いや、僕自身がそうだとは（斜視だとは）思わなかったので」

私「何でお前はいっつもいっつも、自分のことは擁護して他人の事はズバズバ言うんだよっ」

私「佐々木さんは女の子だよ気遣えよ」

来栖君「・・・はい、すみませんでした」

私「次から、人さまの身体の事を言うなよ。太ってるだとか痩せてるだとか、何かしらの理由が
あってどうにもできないことだってあるんだよ？」

来栖君「はい・・・気を付けます」



まさか、自分で自分の斜視に気づいてない彼が

人さまの斜視を怖がるとは思いませんでした


せめて長女の美貌で癒されてくださいませ
（1年以上かけて超痩せたので、毎日何十枚と写真を撮りまくってます）