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成程話:理不尽体験
2012年10月12日 15:33
精神科医の松崎一葉氏の心に響く言葉より
どんなに努力しても叶わないこと、自分でコントロールできないことに直面した時、私たちはどう対処したらいいのか?
努力すれば報われる(報酬が得られる)という形態を[努力―報酬モデル]と呼ぶ。
努力―報酬モデルは[頑張れば結果に繋がる]という極めて単純明快なシステムだ。
[一生懸命勉強すれば成績が上がる]
[練習すればできるようになる]
[頑張って働けば給料が増える]
人はこの努力―報酬モデルが成立しているうちはストレスをあまり感じない。
大変な努力をしても報酬が得られればストレスは最小限で済む。
ところが、このシンプルな努力―報酬モデルが崩れてしまうと人は非常にストレスを感じることになる。
この単純明快な努力―報酬モデルが崩壊した時人は心を病むことが多い。
世の中は必ず優れた方が勝つとは限らない。
いい企画が必ずコンペで勝てるわけではない。
何らかの力が働いて、明らかに勝っている方が落とされる。
それは論理では割り切れない理不尽さだ。
私が子供の頃まだ日本社会にはコミュニティが存在していて地域の繋がりはとても密接だった。
そして、ガキ大将の兄貴的な保護の下に、時に厳しく躾けられ、成長できた。
そういった地域や集団での関わりの中で、理不尽さをいっぱい経験した。
子供の頃群れて遊ぶと兎に角人に揉まれる。
そういった小学生の頃の年代を[ギャングエイジ]と言う。
宇宙飛行士に必要な資質[同じ釜の飯体験]と[理不尽体験]を、ギャングエイジで得ることになるのだ。
理不尽なことを沢山経験してきている人というのは、社会に出て明らかに上手くいかないことがあっても[まあ、そんなもんだわな]と乗り越えることができる資質=『情けの力』を身につけている。
ギャングエイジの体験によって情緒的に理不尽さを享受できる『情けの力』が育つのだ。
『情けの力』幻冬舎
理不尽な体験は小学校でできなくても、学校の運動部で経験できる。
たった1学年しか違わないのに上級生に対する絶対服従や下級生への理不尽な要求。社会に出ても運動部出身者が比較的に理不尽なことに耐えられるのはこの経験があるからだと言われる。しかし、エリートコースをまっしぐらにきた人は、ちょっとした理不尽なことに大きくストレスを感じることが多い。長期間同じメンバーで宇宙という閉ざされた空間に滞在する宇宙飛行士には逃げ場がない。
宇宙飛行士に必要な[同じ釜の飯体験]とは、共同生活で他者への共感や[人に揉まれる]という人間関係を学ぶこと。
[理不尽体験]とは不合理なことや理不尽なことに耐えられる情緒的余裕のことで、これがなければ想定外のことに対処できなくなると松崎氏は言う。
人は[情]という好き嫌いや感性の力で動くのであり、論理や理屈で動くのではない。人に揉まれ理不尽な体験を通して、[情け]という、他人を労る気持や思いやりの心を身につけたい。
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