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いい話…人を喜ばせたい気持ちって凄く素敵!

2011年06月16日 01:37

こころチキンスープより

83歳の祖母は、かつてはあれほど元気だったのに、祖父を亡くしてから少しずつ弱り始めてきました。
ついに自分の家の管理もままならなくなったとき、私の母が祖母を引き取りました。
母の家には、いつも私たち一族の誰かしらが祖母を訪ねて行きました。
祖母には、二人の子どもと8人の孫と22人の曾孫がいて、私たちはとても仲のよい大家族だったのです。
いまから三年前、12月のある寒い午後、私は、当時八歳の娘と「ひいおばあちゃん(祖母のことを、家族のみんながこう呼んでいました)に会いに行きました。
祖母はもう、ものごとにだんだん興味を示きなくなっていました。
ところがその日、娘のミーガンが大事そうに抱えているお人形に目をとめて言ったのです。
「私も小さい頃、とびきり素晴らしいお人形をもっていたんだよ」
ミーガンが、目を見開きました。
「ちょうどお前くらいの歳だったかしら、クリスマスプレゼントにもらったのよ。
あの年のクリスマスに、まっさきに開けた包みが、あの、世にも美しいお人形だったんだよ。
お前たちにも見せてあげたかった…
それはそれはきれいなお顔をしていた。
磁器の上に、手描きされていたの。
茶色の長い髪は、大きなピンクリボンで結んであって、真っ青なお目々を、ぱちぱちと開けたり閉じたりするんだよ。
胴体はキッド(子ヤギのなめし革)でできていて、ひじもひざもちゃんと曲がるのよ」
ひいおばあちゃんは、あたかも畏れ多いものの話でもするように、声をひそめました。
ピンクドレスもきれいだった。
ドレスの裾は、豪華なレースでかがってあるんだから。
でも私が一番よく覚えてるのは、ペチコートなんだよ。
薄手の上等な布に、何重にも繊細なレースが縫いつけてあってね。
それに、小さな靴には、本物のボタンがついていた…あんな素晴らしいお人形プレゼントにもらえるなんて、夢のようだった。
あの朝、私はどんなに幸福だったろう! 」
遠い昔のクリスマスを思い出したひいおばあちゃんの目はうるみ、声は震えていました。
「私は、その朝ずっとそのお人形で遊んだんだよ。ほんとにきれいな人形だった…
それから、あの事件が起こったの。
母さんがクリスマスのごちそうができたと私たちを呼んだので、私はお人形をできるだけそっと、廊下のテーブルに置いたのよ。
ところが、食卓につこうとしたとたんに、ガシャンと大きな音がした。
振り向かなくても、わかったわ。
私の大切なお人形だって。
そうなの、やっぱりそうだった。
小さな妹が手を伸ばして、お人形のペチコートを引っ張ったのね。
少しだけ、テーブルから垂れていたんだよ。
私が食堂から駆けていくと、私のきれいな人形が床に落ちていた。
顔は、こなごなに砕けてしまって…母さんがくっつけ合わせようとしてくれたけど、どうしてもうまくいかなかった。
それっきりさ」
それから数年後に、その小さな妹も肺炎で死んでしまった、とひいおばあちゃんはミーガンに話しました。
その目から、涙がこぼれ落ちました。
私にはわかりました。
それはお人形を失っただけでなく、妹を失ったことを悲しみ、失われたときを悲しむ涙だったのです。
ミーガンは、帰りの車に乗り込むと、開口一番に、興奮した口調で言いました。
ママ、すごい思いつきがあるの!
クリスマスには、ひいおばあちゃんにお人形をあげましょうよ。
壊れてしまったお人形とそっくりのお人形を!
そしたらひいおばあちゃんは、あのお人形のことを思い出しても泣かなくなるわ」
私は幼い娘のやさしさに、胸が熱くなりました。
でも、ひいおばあちゃんの記憶の中に眠るようなお人形は、いったいどこへ行けば見つけられるのでしょう?
けれども、「意志あるところに、道あり」でした。親友リズクリスにこの話をしてみると、リズが昔ながらのお人形を作る人が近くにいると教えてくれました。私はさっそく、この人にお人形の顔と手足を作ってもらうことにしました。
また、人形専門店に長い茶色の髪の毛とキッドの胴体を注文し、ひいおばあちゃんがあれほど子細に語っていた衣装を再現するため、娘と一緒に生地やレースリボンを買いそろえました。
いよいよクリスマスまで残りわずかになったとき、クリスの助けを借りて、レースのペチコー卜をつけたお人形衣装が完成しました。
本物のボタンがついたお人形の靴も見つかりました。
ミーガンは、失われたお人形のお話の絵本を作りました。
こうしてついに、プレゼントの準備が整いました。

クリスマスイブに、ミーガンと私はラッピングしたお人形をもって意気揚々と出かけました。
ひいおばあちゃんは、子どもたちとその親たち、おじさん、おばさん、いとこたちに囲まれて座っていました。
「これ、ひいおばあちゃんにプレゼントよ」とミーガンが言いました。
「でもまず、このお話を読んでね」
「大きな声でみんなに読んで」と子どもたちの一人がせがみました。
ひいおばあちゃんは、声に出して物語を読み始めました。
ところが、最初のぺージを読み終わらないうちに、涙声になり、それ以上先へ進むことができませんでした。
ミーガンが引き取って、続きを読みました。そしていよいよ、プレゼントの包みを開けるときがきました。
ひいおばあちゃんは、包みからお人形を取り出すと、それを胸に抱きました。
そのときの顔を、私は決して忘れることができません。
ひいおばあちゃんは、ふたたび涙にくれましたが、今度はうれし涙でした。
か細い腕でお人形をあやすように揺すりながら
「私のお人形とそっくり、本当にそっくりだわ」と繰り返し言いました。
本当に、お人形はそんなにそっくりだったのでしょうか?
いいえ、私はそうは思いません。
ひいおばあちゃんの思い出のお人形を再現しようと、どんなに私たちが走り回ったところで、そっくり同じお人形は二度と作れるはずはないのです。
私たちは、ただひいおばあちゃんを喜ばせたい一心で、自分たちにでさることをしただけでした。
それでも、ひいおばあちゃんは涙を流して喜んでくれました。
愛の気持ちは、いつだって人の心を明るく照らし出すのですね。
ジャクリーンヒッキー

このウラログへのコメント

  • なな♪ 2011年06月16日 23:48

    絵描き歌さん:外国だとお金持ちの人の義務みたいなのがあるっていうね

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