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放浪ゲーム9 宴

2009年08月20日 12:46

放浪ゲーム9 宴

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浮浪者たちは輪になって宴を始めた

わたしと結衣はその輪の中にいた

先ほどの浮浪者が わたしたちを紹介し

わたしたちは 丁重に挨拶をした

小さい頃から飲んだくれの相手をしていたわたしは

それなりに上手く彼らに対応した

それ以上にここには 

わたしらの知らない連帯感が

あることを感じた

遊びで放浪しているわたしらにはわからない

もっと切実で深い苦労が

彼らをそこに追いやっているのだろう

彼らは 行き先のない者には寛大なのだろう

もしかしたら わたしらの心の中にあるもの

それを 感じ取っているのかもしれない

どこからか持ってきたのか 

つまみなんかもある

残飯なのかもしれないが

それは 豪勢なものと言っても差し支えないものだった

「運がいい日は このくらいのつまみはあるんだ」

そう1人の浮浪者が話し掛けてきた

「最近の若いもんは 毎日飲んでるからな

飲み屋のゴミ箱漁れば これくらいは集められる」

あまり 聞きたくはない言葉だったが

確かに 理にはかなってると思った

しかし この宴の主役は わたしじゃないと感じていた

浮浪者たちの視線は結衣に向けられていた

それは 結衣も感じ取っていた

「いいかな?」

そうわたしの耳元で囁いた

それが何を意味するのかわたしにはわかった

わたしは 無言で頷いた

結衣は 1人1人に 

密着し お酌をした

もし 飲み屋に勤めたなら 

いいホステスになるな

そう 結衣をみて感じていた

「いいのかい 彼女にあんなことさせて?」

1人の浮浪者が わたしに聞いた

彼女は 今 少し病んでますから 

好きにさせてください」

そう 言いながらわたしは無念そうな顔をした

演じすぎているかなと思ったが

それも 上手く解釈されたようだった

「でも いつかは あいつとここから出ていきたいと思います」

わたしはうつむいた

「だから 今は 何も言わないでください」

そう言ってわたしは 酒を一気に飲み干した

彼は わたしの肩をたたき 何も言わなかった

ただ デマカセで 結衣が病んでいるとわたしは言った

しかし わたしも結衣も 

その時 本当に病んでいたのかもしれない

わたし自身が 狂っているのはわかっていた

そんなわたしと行動をともにする結衣も

狂いかけて いや すでに狂っていたのかもしれないと

わたしは その時 気づいてなかった

週に一度 宴はあった

小さい宴は毎日のようにあったが

わたしらを いや 正確には 

結衣を囲んでの宴は

週に一回だった

それは 毎回エスカレートしていった

普段の日は わたしたちは 

寄り添ったまま 過ごした

金がなくなってくると 

わたしは 日雇いに出かけた

結衣は そんな日は 

何処かにふらっと出かけ

数万の金を持って帰ってきた

そんな日は 何故か ホテルに泊まりたがった

取り憑かれたように 体を洗い

取り憑かれたように 求めてくる結衣に

わたしは何も言わず 応えた

何をしてきたのか聞くまでもなかった

ただ それをわたしも結衣も口には出さなかった

すでに 何かに結衣は蝕まれていた

わたしは それすらも気づかなかった

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