趣味は読書、久闊を叙す

池波正太郎の「鬼平犯科帳」(文春文庫)を、読み返しているのだが、多分、三回目くらいだろう。
新潮文庫の「剣客商売」も二回は読み返している。
「鬼平」は一巻目から読み始めて、途切れながら、今、八巻目を読み終わったところ。
全て丁寧に読んでいた筈なのに、読み始めても、ほとんど思い出せない。
データ入力などで、値を変えることを上書きするというが、今「鬼平」を上書きしているところ。
好きで夢中で読んだ筈の作品でさえ、うろ覚えなのだから、若い頃読んだ文学作品などは、ほとんど忘れているのだろう。
僕は読書に関するエッセイも好きで、結構読んだが、あるエッセイでは、読書の楽しみは、再読することにあると書いてあったように思う。
若い頃はそんなことは思わなかったが、今は分かる気がする。
気まぐれに、昔読んだ本を手に取り拾い読みする。
昔馴染みの、友人に会ったような気がする。
沢山本を読んだということは、沢山の知り合いを作っていたようなものだ。
少し捻くれた考えだが、健康で老後を迎えるなら、一人であっても、既読の万巻の書があれば、淋しく無いかもしれない。