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打算-30/広い部屋

2010年07月23日 00:19

打算-30/広い部屋

料理は上手いかと秀一が聞いたのは、食べる事が好きと言うよりやはり子供時代の所為だった
貧しく何時も腹を空かしていた
小学校の6年になると、妹や母に食い物を廻した
新聞配達バイトをし、中学ではそれに米屋の配達を加え、高校卒業するまで続けた
腹一杯食べた経験は、高校生になるまで一度も無かった
昭和30年代は、食料事情もかなり良くなっていたが、戦争の後遺症の父がまともに働けず、今で言う極貧の生活だった

父は不自由な身体で小さな田んぼで米を作り、畑で野菜を作った
そして、母は現金収入の内職
その二人の姿をずっと見て来た

その当時、中学アルバイトをしていたのはクラスで秀一を含め2人
何も恥ずかしくもなかった
父に教えられた言葉・・・・・「職業に貴賎なし」
40代半ばを過ぎても、この言葉は忘れてはいない



「とても上手に作る、私より」
オーケー、幾ら出せばいい?」
「二人分の400ドルで十分」

「今日からでいいよ。家に戻って荷物を持ってくればいい・・・店に借金は?」
「2000ドル」
「解った。私が店のママと交渉してあげる」
「有り難う」
支度金、恐らく衣装代と化粧品、それにセクシー下着代だろう
幾らかは取り返せる


ユェミーは、年上の女ゾーラの家に住んでいると言う
孤児で里親に虐められ逃げ出したらしい
嘘か本当か知らないが、秀一にとってそんな事はどうでも良かった

こちらに来て直ぐに雇ったメイド料理が不味過ぎた
それに外国人だった為、ベラボウな税金を取られるのも気に入らない
月300ドルなど馬鹿にしている
ユェミーならシンガポール人なのでそれも無い
シンガポールは一人当たりのGDPが3万米ドルを越え、アジアでは3位と言う金持ちの国
但し、貧富の差が激しい

料理が上手ければそれだけでいい
家の貴重品と言えば、パソコンテレビ位なもの
盗られた所で大した事は無い


スペアキーを渡し、秀一は仕事に出掛けた
週末の金曜日で取引額も少なく7時前には帰れ、途中カラオケ店に寄り精算をしてやった
500ドル減額させたが、もっと少ない筈だ
まあ、よしとするかと秀一は考えた

ドアにキーを差し込むと中で足音がする
「あーそうだ、ユェミーだった」
ドアを開けるとユェミーが直ぐ前に立って、お帰りなさいと言う
然もいい匂いがしている

中華は好きですか?」
「ああ、好きだよ」
「よかった」


ダイニングのソファの横に、大きな紙袋と古ぼけたダッフルが置いてある
「ユェミーの部屋を言って置くのを忘れていたね」
3LDKの使ってない部屋に案内した
「ここを使えばいい」
「・・・・・こんな広い部屋?」
「今からここがユェミーの部屋だ」
「さあ、夕食にしてくれ」


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