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「巨 豊」

2012年10月11日 00:44

「巨 豊」

仕事が終わりタバコを吸う男に話しかけて来た一人の女
二人の子供を持つ40歳を過ぎたばかりの女
その名を久保淑子という
彼女がこの物語の主人公


1-ルール

「あら紫野さん、お久し振り」
関内駅前のビル一階の喫煙室で、仕事が終わりタバコを吸う男に話しかけて来た一人の女。
男が去年出向していた先に勤めていた女で、確か名前は・・・久保淑子だった。

「久保さん、変わりはないですか」
「ええ、元気だけが取り得ですから」
「いや貴女は仕事もよく出来た」
それは確かで仕事は素早くこなし、然も明るく職場ムードメーカーだった。

その男は女癖が悪いと人からよく言われていた。
決してそんな事はないと男自身では考えている。
誰かれの区別なく片端から誘い、平気で騙すのを女癖が悪いと言うのだ。
その男、本来なら何としても誘うところだが男のルールに引っかかり止めた女。

先ず同じ職場の女には手を出さない。
教え子、取引先、友達の彼女奥さんは当然で付き合っていなくとも好きな女さえも。
そして、バツ一は別だが未婚の女は絶対に誘わない。
そのルールを何十年も守って来たからこそ、暗い夜道も後ろを気にせず男は歩けた。
しかしその女、今はそのルールから外れた。


「辞められる時、一度ビールを飲もうと誘って頂いたけど、まだ時効になってません?」
「なっていませんよ」
「だったら今日は?」
「ええ、それなら行きましょう」

ベイスター通りを少し歩いた所にある、行きつけの中華屋に二人で入る。
その店はオープンして三年目の安くて美味しく、二人で飲んで食べても5千円を超えることはない。
気さくでよく喋る主人と女将さんも男は気に入っていた。
店に入ると主人が訳あり顔で上手い日本語で男に挨拶をする。
いつもの席に向かい合って座ると同時に「生二つ」と注文。

男はメニューを渡して注文は女に任せた。
「小龍包もシュウマイも美味しいよ」
そう言う男に、「それじゃそれを二つずつ」
「いや一つずつにして種類を増やさない?」
「ええ、何がお勧めなの?」
「何でも美味しいよ」

このウラログへのコメント

  • リリア 2012年10月13日 03:10

    書き始めたのですね!

  • 真理♪ 2012年10月18日 12:52

    気付くのが遅くなりました。
    連載楽しみにしてます(^-^)/

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