あたし大部屋女優なんです。

、、、あたし大部屋女優なんです。
監督さんは、とっても優しいんです。
スタッフさんもとっても優しいんです。
照明のオッチャンからは、口説かれてるんです。
まだお返事はしてないんです。
、、、あたし大部屋女優なんです。

、、、あたし大部屋女優なんです。
出身は、田舎なんです。
だんれもしらねえさいはてのお、、、田舎なんですう。
皆さんには、神戸出身って言ってあるんですのよ、ふふ。
そのうちばれねかなっとはスンパイすておるんですらい、はあ。
、、、あたし大部屋女優なんです。

、、、あたし大部屋女優なんです。
田舎では、絶世の美女、メンコイメンコイって、可愛がられてたんです。
そいでえ、いい気になってえ、都会さ出てきました。
そったら、まんずびっくらこいたでヨ。
美人さあ、あっちにもこっちにもそっちにも、美人さあね。
、、、あたし大部屋女優なんです。

、、、あたし大部屋女優なんです。
夜バイト掛け持ちなんですね。
だって、そうでもしないと生活できないんですのよ。
夜は夜の顔、昼は昼の顔。
だってね、そうでもしないと生活できないんですのよ。
、、、あたし大部屋女優なんです。

、、、あたし大部屋女優なんです。
高校生の時、先輩に勧められて演劇部に入ったんですね。
部活の皆には、筋が良いって褒められたんですのよ。
おとうちゃんには、辞めれって言われてね。
勘当同然になってたんですよ。かあちゃんがとりなしてくれてね。
、、、あたし大部屋女優なんです。

、、、あたし大部屋女優なんです。
そいでさ、高校中退したんですよ。
夜中に荷物纏めて駅に走ったんですのよ。
そりゃあ、もう必死でしたの、若かったんですのよ。
、、、あたし大部屋女優なんです。

、、、あたし大部屋女優なんです。
いま出番待ちなんです。ちょい役なんですけどね。
セリフ貰えたんですのよ。お前頑張ってるなあって。
助監督さんが推してくれたんですのよ。
決して枕じゃありませんからね。
、、、あたし大部屋女優なんです。

、、、あたし大部屋女優なんです。
スタッフさんたちには受けがいいんですのよ。
時間待ちのときなんか、お茶の用意しますのよ。
たまに大道具、やりますのよ。
看板も描いたりね、え?、、、はい、絵には自身あるんですね。
、、、あたし大部屋女優なんです。

、、、あたし大部屋女優なんです。
肌の手入れ、化粧、着付けなんかもひと通りできますのよ。
あ、それからお料理は得意なんですの。
田舎にいるときに、おかあちゃんから教えてもらいました。
料理ができると、どんなに生活が苦しくても生きていけるからって。
、、、あたし大部屋女優なんです。

、、、あたし大部屋女優なんです。
え?、、、カレシさんですか、、、うんん、、、まあ、それはね、、、
居たには居たんですのよ。まあ、貢いでたっていうか、ええ。
なけなしの貯金全部持っていかれましたのよ。
家賃も随分払ってなかったらしくてね、追い出されました。
、、、あたし大部屋女優なんです。

、、、あたし大部屋女優なんです。
こんな話誰も聞きたくないでしょう?そうよねえ?
でね、友達は大事ですよ。大切にしてね。
田舎を出る時はこんなことになるなんてね。
わからないじゃない 、 、、、でしょう?
いま、おとうちゃんからの手紙を読んでるんよ。
いつでも帰っておいでってね。
そう言ってくれてるんよ。
おとうとのケンジも、早く帰ってこいってね。
嬉しいじゃない?
、、、帰ったほうがいいだべか。
、、、皆さんはどう思われますか?

、、、あたし大部屋女優だったんですよね。