名もなき旅人の破滅…

水は流れ　風は吹き　火は燃える

万緑みな瑞々しく　奮える大地は雄々しく

遥かな空は全てを吸い込む

傷は癒えたか旅人よ　ならば最果ての地へ向かうがよい

そなたの望みはきっと叶うはずであろう

大地の神は旅人に舞い落ちる風花に紛れて囁きかけた

名もなき旅人は数日の治癒の為に借りていたアカシアの木の空洞に別れを告げる

遠い日の面影は薄っすらと彼方に伸び行く闇となる

探し物は探したがそれが自分の何なのかさえ分からない

苦しくて苦しくて…どうしようもないときにそばにいて…

願っても願っても…どこにもないあの温もりは記憶の中でさえ失われる

見えない傷に蝕まれた旅人よ

お前の背に　手の平に　希望はあるのか？

黄泉の道へと続く階段を登っているとも知らずに何故ゆくのか？

万能の神は流れ行く雲の狭間から問いかけた

黄泉の世界へと続く道を知らず知らず歩く旅人

もう後には還れない　万能の神でさえも無力と化す

泣く者はいない　気づく者さえいない

全ては終わった　旅人はやがて静かに破滅を迎えた………