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恋は苦しいけれども嬉しいもの

2024年02月28日 09:49

恋は苦しいけれども嬉しいもの

<裏的な要素は後半にあります>

 逢瀬の間も、
 今朝の別れ際にも、
 あなたは「ずっと愛しているよ」と言ってくださいました。

 でも、
 先のことは分からないじゃあないですか? 
 本当にずっと、わたしのことを愛してくださるのですか?....信じられません。
 ・・・・・
 嗚呼、そう思うと、
 あなたと別れた今朝、わたしの心は不安でいっぱいです。
 わたしは、
 この黒髪が乱れているように心も乱れてしまい、
 物思いに沈んでいってしまうのです。
 恋というものは苦しいものなのですね。


これは百人一首の第80番歌、恋の歌。
「ながからむ 心も知らず 黒髪の 乱れて今朝は ものをこそ思へ」を、
私が意訳したものです。

手元にある解説書の現代語訳はこうです。
末永く変わらないという、あの人の心ははかりがたく、今朝の黒髪が寝乱れているように、
心が乱れて、あれこれと物思いがつのることだ」

これだと、本当につまらない。情感が伝わってきません。
古文の授業がつまらなくなるはずです。


次は英訳をしてみましょう。

 I can not see your mindwell.
 although you said you wouldlove me forever,
 so this moning,
 I'mlost in thought with myheart confused like my disheveled black hair.

 私には、あなたの心が、よくわかりません。
 あなたはわたしに「ずっと愛しているよ」って言ってくれたのですが。
 今朝は、
 この黒髪が乱れているように、私の心も乱れています。
 (なぜなら、貴方の気持ちが本当かどうか....わからないので、不安でしかたがないからです)

このように、
ひとつの事象...この場合は恋する気持ち...について、
見る方向や、見方を変えてみると、
それまで見えなかったことが見えてきます。

この「見方を変える」ということが分からなくて....できなくて、
私達は日々、四苦八苦しているのだと思います。

でも、方法は、今は見えないだけ。
必ずあると信じて取り組んでいくことが、
「生きていく」ということなのかもしれません。



この歌、実はとてもエロティック官能的な歌です。
要点は「けさ(今朝)」英訳では「 so this moning 」にあります。

朝に思うということは、
つまり、
私はあなたと一晩床を共にしていたのです。
つまりSEXもあったわけです。

そして、朝になる・・・
黒髪が乱れているのは、
激しく何度も何度も抱き合ったからなのです。
あの人の心が読めなくてイライラして、
黒髪を掻きむしって乱れたわけではないのです。

SEXによる黒髪の乱れを、
あなたの愛が末永く続くのか不安だという「乱れ」に
重ね合わせているのです。

ここが、この歌の美しいところだと思います。


ちなみに、
明治歌人与謝野晶子さんの詩集「乱れ髪」はこの歌をヒントにしたと云われています。
その与謝野晶子さんの歌はこれ。
「くろ髪の 千すじの髪の みだれ髪 かつおもひみだれ おもひみだるる」

”おもひみだれる” という感情が
”千すじ” ...つまり数えきれないくらい沢山...わたしの心を支配しているのです......
悩みは尽きないというわけです。

そして、ここで表現している、
”おもひみだるる” というのは、とても官能的(erotic)で艶めかしい表現だと思います。
あれこれと想像するだけで性感は高ぶってきます。

ちなみに、erotic を辞書でひくと、
性愛の~」
肉体関係性欲を起こさせる[かき立てる]」
淫乱な、欲情にとらわれた」
とあります。

うわッ! とたんに裏になりますね。

でも、
その裏的要素というもの、
実は、私達の ”同じ心” と” 同じ身体” に宿っています。
つまり、
表も裏も表裏一体、
erotic はメビウスの輪のように心身を巡っているものなのです。

官能的文学が単に「いやらしい」ものに終わらない、
その理由はここにあります。



話しを戻します。

この歌にあるように、
恋をすると、あれこれ悩みます。
恋をすると・・・
楽しい思いも沢山あるのだけれども、
実は、心は苦しくなることもあるんですね。

そのことを、みなさん、無意識だけれども、知っています。
なので、
その苦しさを避けたいと、これも無意識のうちに思っています。
つまり、踏み込む手前にいようとするわけです。

不倫などは、その最たるものです

なので、
本当の恋には踏み込まない。
逢っているときだけ楽しめればいい。
結果として、
見た目は、SEXフレンドみたいになるのです。

でも、本当は違うはずです。
SEXはとても大切なこと
だってお互いの性器を舐め合ったりするんですよ。
そんなこと、
好きでなければできません...(と私は思っています、違いますか?)
つまり、
逢瀬の間は恋の中にいるのです。
そう思うと、
髪が乱れるのは、男も女も本望ですね。
嬉しいことです。

SEXの後にまた一緒にバスルームで戯れて、
髪も洗って
ドライヤーで整えて....
沢山愛し合った気持ちを日常の生活の中に沁み込ませていければ、
そして、
沢山愛し合った気持ちを明日の糧にしていければ、
逢瀬の意味は十分にあると思います。
好きなんですから。

恋は苦しいけれども嬉しいもの...だと思います。

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