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長い髪の毛がやたらと落ちている

2021年09月15日 23:28

新築マンション引っ越しました。
1階の角部屋。立地条件もよく、日当たりも良好。文句なしです。
引っ越した初日は、手伝ってくれた友人たちと飲み明かしました。

翌日の昼過ぎ。友人たちが帰った後シャワーを浴びました。
友人たちの中にたばこを吸う人がいたので、髪についた臭いが気になっていたんです。


髪は私の自慢でした。パーマカラーリングもしたことのない、まっすぐな黒髪。手入れも欠かしません。
その日もシャンプー、トリートメント、リンスを済ませて、さっぱりした気持ちで浴室を出ました。

さて、昨夜の後かたづけです。
ちらかったスナック菓子の袋や空き瓶を片付けて、掃除機をかけていると、おかしなことに気が付きました。



長い髪の毛がやたらと落ちているのです。
ちょうど私と同じぐらいの長さでしたが、髪質が違う。
友人たちの中に髪の長い女性はいなかったし、引っ越したばかりの部屋に・・・?
少し不思議に思いましたが、自分の髪だろうという結論に落ち着きました。

今日は、昨日の引っ越しの手伝いに来れなかった友人が訪ねて来ます。
友人から最寄り駅に着いたという電話を受けて、私は駅に向かいました。

その友人は霊感が強いことで有名だったのですが、
髪の毛のことは特に気にしていなかったので、とりとめもない話をしながらマンションへ帰りました。
・・・?
部屋の床に再び長い髪の毛が落ちていたのです。ま、さっき取り忘れたのでしょう。さっさとゴミ箱に捨てました。
友人は県外から訪ねて来たので、当然泊まるつもりです。
シャワー借りるねー」
勝手知ったる他人の家、友人は早速浴室へ。シャワーの音が聞こえます。
と、いきなり蛇口を閉める音が聞こえたかと思うと、友人が慌てて浴室から出てきました。

「お、お風呂場に・・・」
友人は真っ青です。とりあえず落ち着かせてから話を聞きました。
お風呂場に髪の長い女がいたの!」
ここは新築マンションです。幽霊なんているはずがありません。
しかし説明しても、友人は帰ると言って聞き入れませんでした。
とはいえ、なにしろ遠くからきたので、この時間では帰れません。
「とにかく私はこの部屋にはいられない。
 私は近くのファミレスで夜明かしするから、あんたも何かあったらすぐ電話するのよ」
そう言って友人は出ていってしまいました。


一人残された私。昼間の髪の毛のこともあってさすがに心細い。
大丈夫。ここは新築よ。
友人に言った言葉を自分に言い聞かせ、私はシャワーを浴びることにしました。

『霊感が強い』なんていうのも考え物ね。人の引っ越し台無しにして。
心の中で友人に悪態をつきながらシャンプーをしていると・・・頭に違和感があります。
頭皮を傷つけないように爪を立てずに、指の腹でマッサージをするように・・・いつも通りのやり方です。でも、おかしい。
・・・・?
私はシャンプーの手を止めました。


・・・!
私は頭に置いていた両手を、おそるおそる目の前に持ってきました。
・・・!
爪を立てずに、指の腹でマッサージをするように・・・
もう一つの手が私の髪を洗っています。
「誰!?」
振り向くと、顔の焼けただれた女性(でしょうか?)が私の頭の上に片手をのせたまま・・・
「・・・きれいな・・・か・・・み・・・ね・・・」
確かに女性の声でした。

シャワーの音で気が付きました。
私はシャンプーの泡を流さないまま気絶していたので、髪の毛がごわごわです。
そんなことを気にしている場合ではありませんでした。
さっと泡を洗い流し、着の身着のままマンションを飛び出しました。

電話ボックスから友人のケータイに電話し、ファミレスで合流。
「やっぱり。明日、不動産屋に聞いてみましょう。付いていってあげるから」

翌日、不動産屋に聞いた話はこんな感じでした。


マンションが建つ前、そこには1件の家と花屋さんがあったそうです。
花屋の娘さんは、長い髪が自慢の美人でした。

ところが、その家で火事が起こってしまったのです。
お風呂場のガス釜が爆発したのです。
居合わせた娘さんは顔を大やけどし、自慢の髪もほとんどが焼けこげてしまいました。
娘さんは恋人にもふられ、ひきこもりがちに。
一掴みだけ残った髪の毛をそれはそれは大事にしていたそうです。
シャンプー、トリートメント、リンスを1日に何度も繰り返し、
鏡の前で髪をとかしながら、
「・・・私の髪、きれい?」
「・・・私の髪、きれい?」
何度も母親に尋ねていました。

ところがそのわずかな髪も、精神的ショックと手入れのしすぎで抜け始めてしまったのです。
娘さんはお風呂場で手首を切って自殺しました。
お母さんが買ってきてくれた新しいリンスをまるまる1本、1度に使い切ってから。


「ちょうどお嬢さんのような、髪のきれいな娘さんだったよ」
不動産屋は私を懐かしそうに見つめて、そう言いました。

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