手ぇ洗えこの野郎！

『手をきれいに洗いましょう』
今は懐かしき小学校において、いたるところで掲げられていた標語です。
石鹸で手の甲と平、指の間を洗おう。さらに手首もしっかりと洗って、爪の間に入った汚れもきれいに落としましょう・・・というような指導を受けた記憶もあります。

小さい頃から手をしっかり洗うように教えて、衛生的な習慣をつけるようにするというような狙いがあったのでしょうか。
まだ純朴な少年だったエンドウさんはその標語に従って丁寧に手を洗ってバイキンをやっつけていました。
まあ、その割には給食のパンを床に落としてしまっても拾って食べてましたけど。

特に精肉店でアルバイトをするようになってからは、その傾向がより強められます。
客から見えるところで肉を素手で扱っていてはクレームの要因となりますが、舞台裏である製造の場では素手での作業が基本となります。
そのほうが楽だし確実ですからね。もちろん消毒をしてから行います。

製造をしていると爪の間に脂が入ってしまったり、肉の臭い――特にホルモンなどの内臓類を扱ったときにそれがうつってしまうんですよ。
ホルモンの臭いなんか説明をするまでもなく心地よくありませんし、詰まった脂も放置しておけば次第に濃厚な臭気を放つようになります。
あまり好ましいことではありません。必然的に手は洗うようになります。
おかげさまで小学生時代の指導と相まって、丁寧な手洗いをすることは習慣と言ってもいいほどになりました。

手を洗うことに対して意識が比較的強いせいなのかもしれませんが、ちゃんと手を洗わない男性の行動というのが妙に気になるんですよ。
駅の公衆トイレで手洗いをしていたり髪をいじっていたりすると、俺の後ろを素通りしていく人の姿が鏡に映ります。

ちょっと待ってよオッサン、あんた手洗ってませんよ。
不潔ですよ！
手ぇ洗えこの野郎！と説教するわけにもいかず、信じられないものを見るようにおっさんを見送りました。

エンドウさんが住む地域に限られた傾向なのかもしれませんが、用を足した後に水に触れることもなくトイレを後にする男性が意外と多いんですね。
それがおじさんやおじいさんだったら、「きったねえな、最悪」とか「仕方ないなぁ、もう」で終わるような気がすると偏見で思います。
しかし、若者であっても手を洗わない輩がいるんですよ。
ジャニーズ系のルックスで、それだけでも強烈だって言うのに自分の強みを生かすセンスで身を固めているイケメンでさえも、チンコ触った手を洗いもせず去っていくんですよ。
驚愕です。
たまたま、そのイケメンとトイレを出るタイミングが一緒であったため、彼の行く先を目で追ってみました。
そうしたら彼女を待たせていたようで、短い会言葉を交わした後、絡みつかせるように手をつないでホームへと消えていきました。
・・・何も知らないって幸せなことです。

いやあ、手洗いを省略する心理っていったいどういうものなんでしょう。
もしかしたら単純に面倒くさいだけなのかもしれません。
しかし、いくらなんでも汚い手で公共のものに触れたり、ましてや友達や彼女に触れるなんて失礼すぎて、とてもじゃないけどできません。
もし、自分の行動になんら疑問を抱いていないのなら、それに対して他人がどんな不快感を得るかということなんて頭にないのでしょうね。

余談ですが、オナニーもまた然り。
不衛生な手で事をいたしていたために何らかの感染症になってしまって、(当時の)看護婦のお姉さんに病んだチンコを見られるという恥辱を味わって以来、オナニーをする際には必ず手を洗うようにしています。
これからの性教育には、性についての知識を与えるだけではなく、セックスやオナニーをする際には体を清潔にすること・・・というようなマナーも教えるべきだと思いますよ。
もしかしたら、そんなことはすでに取り込まれている内容なのでしょうか。

気にしなければそれまでなのかも知れませんが、手を洗うなどの清潔さを求める行為は大切にすべきことです。
僕たちは逞しい野生動物ではなく、抗菌が大好きな人間なのですから衛生面からいって蔑ろにするようなことではありません。
それに、不潔な人というのはどうしても不愉快に感じてしまうものですね。
単に手を洗うか否かというだけなら個人の判断によるところになってしまいます。
しかし、自分のためと言うよりむしろ他人のために、用を足した後はしっかりと手を洗って欲しいと思います。