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頭が消えたキス

2013年05月07日 01:56

僕は大学の最後の1年と社会人1年目の最初を、さして好きでもない女の子を落すことに費やした。ここでは、ミカと呼んでおこう。

僕はそこそこ女の子には人気があったのだけど、ミカは最初に会った時に僕にひどい嫌悪感を示し、僕はそれがやたらと気に入らなかった。この生意気ロリっ娘を落してやると決心した。

アホだ。

彼女よりもずっと魅力的な女の子が言い寄ってきても、僕はロリっ子攻略作戦のために相手にしなかった。だから、その1年半、僕は修行僧並にえっちと縁がなかった。

ストーキング的なことはしたくなかったから、僕はとにかくミカが必要とすることを提供することに注力した。主にふたりがも所属していた大学の英文雑誌社のための英語編集や、営業、経営全般。それで、僕は周りを巻き込んで、彼女社長に祭り上げた。英語もそこそこ、経営能力のない彼女社長として僕に頼らざるを得ない。

特に営業の仕事はとにかく面白かった。ビタ一文もらえないけど、大企業おっさん大学生が説得し倒すのが快感だった。

そんなだったから、半年ほどでまともに話ができるようになった。

僕が大学を卒業してからは、僕は引き続き雑誌社を支援したり、彼女の関心のある国際交流などの情報を提供し続けた。

僕はしまいには自分にミカが好きでたまらないんだ、という暗示さえかけた。

恋してるって気分は楽しいものだ。それが、偽りのものであれ…

出会いから1年半のある晩、ミカは僕のこれまでの協力に感謝したいので、一緒に食事をしたいと言ってきた。

僕は別に大きな期待なんかしてなかった。プライドの高い彼女なら、僕に借りを作るのは嫌だと思うだろうから。

食事をしてから、一緒に飲んだ。話題は弾み、思いのほかに楽しかった。それが僕の機嫌をよくし、僕はグレンフィディックなんてちょっと高めのウィスキーを頼んだほどだ。

じゃ、帰るからね、と僕は彼女を駅の改札口まで送ると、彼女はもうちょっと一緒にいたいと言う。

それなら、終電まで散歩でもしようか、ということになった。

何の変哲もない暗い武蔵野の街を歩いているうちに、僕はミカ路地に引きずりこまれた。小さい体して、結構強い引き方だった。

ブロック塀に押し付けられたかと思うと、彼女は背伸びして僕の頭に両手を回したかと思ったら、強烈なキスをしてきた。僕はちょいとかがんでそれに応じた。気持ちよかった。勝利のキスだもの。

でも、結構長く、濃厚なキスをしているうちに、僕は非常に慌てた。だって、突然、彼女の頭がなくなっちゃったんだもの。

ミカの頭がなくなっちゃった!ミカの頭はどこに行った!)

ミカの頭は僕の胸のところにあった。キスしているうちに、彼女は腰砕けになっちゃってたのだ。

これには興奮した。

しばらく道端に座って彼女が立てるようになるのを待つ間にも、軽いキスをいっぱいした。

立てるようになった彼女は「帰りたくない」と言い出した。「食っちゃうよ」と言ったら、「そうして欲しい」と返ってきた。

その晩、僕は2度目のごちそうを、過去1年半で最高の、処女というご馳走をいただいた。

でも、彼女の最初のキスに比べたら、あまり思い出深いものではない。だって、頭なくなったって慌てるくらいなんだもの…

それからかなりの間、僕達は恋人ごっこをした。彼女も僕の攻略には薄々気づいてたのだった。

ある秋の日の夕暮れ、僕達は一緒に大学のキャンパスの森を散歩した。恋人ごっこが楽しかった彼女は駆け出し、何度も僕の方を振り向いた。僕に捕まえて欲しいという仕草だった。

僕も駆け出した。

とびきりの美人ではない彼女だけど、黄色や赤に染まった葉を通った夕陽の中で実にきれいだった。

その時、僕は非常な満足感を感じた。アホな1年半が報われたと思った。

このウラログへのコメント

  • ぴーとにゃんこ 2013年05月07日 08:28

    > NAO☆さん

    いやぁ、ミイラ取りがミイラになりました。
    がっつり、ねっちょりの激しい恋になりました。

    互いに冷めた後には非常に不思議な気分でした。
    なんでこいつと、って。
    でもいい思い出。

  • ぴーとにゃんこ 2013年05月07日 09:10

    > ベイビさん

    若くなくても色んなことに一生懸命になれますよ。
    自分に暗示かければいいんですよ。

  • ぴーとにゃんこ 2013年05月08日 08:48

    > はなねさん

    そうなのら。
    自分にプラスの評価をする自己暗示は成功の第1歩なのら。

  • ぴーとにゃんこ 2013年05月11日 21:18

    > ΥゆっきぃΥさん

    それから遠距離恋愛になるくらいにはまりましたよ

    成田に立って、彼女の便を待ちわびるなんてことも…

    彼女も香港・啓徳空港で待っててくれたことあったし

    いい思い出作れた…

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