波が寄せては返すから…☆*:・°★:*:・°☆:*:・°

「このときばかりは君の方が大人…」と、あなたはいつも憎らしげに言うのね。
我慢できなくなるのはあなたで、
「もう、いいわ…」と許すのは私。
女性の欲深さを、どうか知らないつもりにしておいて…☆*:・°★:*:・°☆:*:・°

さざ波がとまらないの。
そのまま津波になりそうな勢いなの。
そんな私を知ってか知らずか、あなたという船は速度を増してゆく。
空調の音だけが、静かに聞こえる部屋の中に、
肉欲の立てる淫靡な音が、いやに響く。
閉じたカーテンの向こうにはあなたのオフィスがあり、私のオフィスもある。
そのカーテンのこちら側で、シーツは二人の汗にしっとり濡れる。
解き放ちたいあなたと、解き放たれたい私が、
最後の官能の大波の来る時を、意味もなく躊躇している。
満月の前の晩が、月は一番明るいと、
教えてくれたのはあなた…
「いいの？」と、あなたは聞くの。
「お願い」と私は、大きく喘ぐの、
「すべてを？」とあなたは確かめるの。
「すべてよ」と、私は脚を絡ませるの。
低くくぐもった吐息と、高く澄んだ吐息とが、四角い部屋の宙を切り裂いて、
私という海に、あなたという雫がこぼされる…
その波紋が静まるまで、何も言わずに、私を抱きしめてね。
言葉は一言も無いほうが、この場にはふさわしい☆*:・°★:*:・°☆:*:・°