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「最近よくある異世界召喚」(1)

2021年03月07日 13:29

「はぁ・・・不幸では無かったが、退屈な人生だったなぁ。」
「予定の順番と違うけど・・・仕方無いかぁ・・・感染したんだな・・・」
 朝霧 呉亜 50代後半 日本人・男性 流行りの感染症で終わりの刻を迎えようとしていた。
「やり残したこと・・・有るけどなぁ~ もう目を開けていることさえ辛い、寒くて、眠い・・・」
生体モニタの警告音が鳴ると共に、終わりを告げた・・・・はずだった。

「うん? 何だか温かいなぁ・・・」 目を開ける呉亜。
「どうなっているんだ? 呼吸器が無い」自分の状態を確認する。
「あれ? 服装が何か違うな。病院の衣類じゃないぞ、まぁシンプルだけどなぁ」
服装は白い作務衣のようなモノに変わっていた。
「ここは、どこだ?」周囲を見渡すと、そこは見慣れない個室だった。

「失礼します」 ドアを開けて若い整った服装の男性が入ってきた。
「お目覚めのようですね。早速で恐縮ですが、広間までおいで頂けますでしょうか?
 司祭様がお待ちです。他の方々も既に向かわれています」

司祭様? あ・・・まぁ、行けば良いのね」 呉亜は促されるまま男性に着いていった。
招かれた先は、西洋の城の広間のような場所だった。
明らかに若い日本人男女が・・・6名ずつ
そして上座と思われる檀上に、数名の貴族のような雰囲気の人々が居た。

「ほ、これで全員揃ったようですね。私はこの国の司祭を務めます、アガリアを申します。」
「皆様、急な事で驚いていることでしょう。これから説明いたしますので、どうか冷静にお聞き願いたい」司祭と名乗る中年男性が言う。

「皆様13名は、こちらの少女の異能により、異世界から召喚されました。」
「この国を含め、この世界には人族の国が13あります。1つは帝都、残りの12が帝都守護する衛星国家です。」
「人族は200年に渡り、他の種族と争っています。」
「25年に一度、神の加護を受けた聖女により、異世界から有能な人材を召喚することで、人族はその生活を守って来たのです。」
召喚されたらしい若者たちが騒めく。
「ど、どうか、お静かに・・・召喚された者は勇者とそのパーティーメンバーとして、類まれ稀ない能力を授かります。どうか、人族の為にご協力頂きたい。」

「それって、俺たちに戦えってこと?」 高校生位だろうか一人の男子が質問した。

「はい、おっしゃる通りです。ただし、今日明日にという訳ではございません。」
「皆様には、それぞれの職に合った、指導者を付け・十分に訓練をして戴いた後、最強の布陣で挑んで頂きます。普段は、この宮廷内にて快適にお過ごし頂けるよう配慮いたします」

「そう、で、職って?」 先ほどの男子が続けて質問した

「はい、皆様ご自身のステータスを確認できます。手を前にかざして、ステータスオープンを念じてください」
呉亜も言われるままに従った。
眼前にスクリーンのような表示が出た。他の12名だけでなく、周囲の者のステータスも見えている。

「鑑定スキルが無い限り、他人のステータスを見ることはできません。」
「これから、鑑定器で皆様の職とステータスを確認させて頂きます」

呉亜は、悪い予感がした。
「他人のステータス見えてるし・・・」
「レベルは1? 職種は”生産者” HPが100 MPが10」
「MPって魔法だか魔術の数値か? HPはゼロで死ぬんか?」
他のステータスを見ると・・・
「剣士、闘士、僧侶魔術師・・・おいおい、独りだけ別かよ」
「レベルは・・・10~30、 もう悪い予感しかしないぞ」
呉亜を招いた若い男性にそっと聞いた
「一般の人ってレベル幾つくらいなの? HPやMPは?」

男性が静かに小さな声で答えた
「この国の精鋭騎士様が、レベル15、HP1500、MP500 上位の僧侶魔術師ですと、MPガ1000ほどです。貴方様もきっと凄い数値なのでしょうねぇ?」

「もう、廃棄処分コースじゃないか?」
「それと、スキルのこれ、、、、創造神の加護、豊穣神の加護、って何だよ? 農家でもやれってか?」
「全知全能、千変万化? 色々分かるって意味か?」

召喚者が一人一人ステータス鑑定されているが、司祭の顔色が良くない
「ねぇねぇ、レベル10って当たりなの?外れなの?」
レベル10の者が続くので、先ほどの若者に聞いてみた。
「そうですねぇ。前回は皆様レベル30以上でしたから・・・今回の聖女様のお力が足りなかったのかもしれません」

そして、最後に呉亜が鑑定を受けた。
「な!、何ーー!」司祭が思わず声を上げた。
「こ、こんな値の為に召喚したのか・・・」 明らかに失望しているようだった。
しかし司祭も大人のようで、「貴方様は、戦闘には不向きのようですね」
貴方様には特別な計らいをしますので、どうかステータスの事は他言無用で・・・」
「は、はい、承知しました」

「で、では・・・皆様を各々の職に応じたご案内をします」
丁度男女3名ずつ分かれて広間を出て行った。

女性は、僧侶3名、魔術師3名か」
「男性は、戦士3名、闘士2名、勇者1名・・・勇者って凄いんだろうなぁ? 一人だけレベル30だったな」

「あの、よろしいか?」 司祭が呉亜に声を掛けた。
貴方様は、こちらの少女を連れて、少女故郷の村に行って頂きたい。」
「行った先の事は、書面にて村長に伝えます。」
そう言うと、召喚を行ったらしい聖女と呼ばれた少女を連れて広間を出た。

宮殿の外に案内されると、馬車が待っていた。
「こちらにお乗りください。」門番らしき男性が言う。
どうも冷たい視線を感じるが、逆らうこともなく、少女と共に馬車に乗った。

馬車の中で、終始無言の少女
気になり、声を掛けてみた
「聖女様?で良いのかな?」
「い、いえ、、、とんでもありません。私は出来損ないだったのです?」
「出来損ない? 何故?」
「と、とても失礼に当たるのですが、今回召喚した方々が外れだったと・・・」
「申し訳ございません。全て私の力不足です」
「え?」そ、そんな事はないですよ。これから故郷に帰ってどうするのですか?」
「うちは、母親と二人きりで、小さな農地を耕して生活しています。」
「あ、あの、、、出来れば、うちで一緒に、、、ダメでしょうか?」
「あ、まぁ職種が生産者ですからね。良いじゃないかな? 戦場に行かないだけ良かったですよ」

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