Kの話

これは、純粋な創作で、この世のいかなるものとも、関係ありません。尚、これを読んで不快になる可能性があります。

Kは、50歳を少し超えたところ。最近、性欲の衰えを、実感している。
Kは未だ独身で、近い将来においても、結婚する予定はない。
Kの心には、「もう、このまま一人で死ぬのだろう」という予感がボンヤリと浮かんでいる。それでも、若い頃はモテないはモテないなりに、恋もしたが、結局実らなかった。
今は、どんな女性を見ても、ときめきすら感じない。いや、ときめきを、自ら抑制している。或いは、諦めているのだ。それでも、衰えたといえども、性欲はあり、最近エロサイトを見つけて、時折、それを見て慰めていた。
今のサイトは、ノーカットは当たり前で、しかも若くて綺麗な女の子も沢山出ている。
最初は、あまりの充実ぶりに、狂喜したが、すぐに、飽きてしまった。
映像的には、ノーカットは究極なので、それ以上は得られないのだという限界の感じがひとつ。あと、女性器のグロテスクさや人のセックスを傍から見る浅ましさのようなものを感じたのがひとつ。それで、暫くサイトから、遠ざかっていたが、ひと月以上も自分の性欲に対して何もしなかったある日、Kは久々に、体の芯から沸き起こるような性欲を感じ、サイトに入った。
様々なジャンルのサイトから、とても上品な恐らく30代前半と思える女性がモデルのサイトを選んだ。
画面の上に5.00と再生時間が表示されていた。Kは、迷わずダウンロードした。
その映像は、主婦と思えるモデルが着衣(ワンピース)のまま、様々なポーズを取るだけで終わってしまい、セクシーなところはどこにも無かった。
このやらずボッタクリのような映像に、Kは興奮した。
Kは、美しい人妻を、5分間の映像の中で、想像の及ぶ限り、触覚、聴覚、嗅覚あらゆる感覚を駆使し、自分の貧しい性体験、恋愛経験を駆使して犯し、蹂躙した。いや、最初は、とても酷いことを想像しようとしたが、やがて、モデルに、恋してしまい、自分がモデルよりも二十歳くらい年上なのを忘れて、自分は童貞で、おねえさんから初めて性の手ほどきを受けるというシチュエーションを設定し、何度も反復した。
久しぶりに、興奮したKは、ベッドに横たわり、下半身をむき出しにし、ティッシュを用意した。
右手を性器に当て、目を閉じて、性器を擦り始めた。
無数に再生したので、モデルの姿態は微細な所まで、脳裏に焼き付いていた。
Kの妄想は、いつしか、越境し、暴走した。
童貞のKは、乳首にキスされ、フェラされ、モデルの性器に顔を埋め、イキそうになるのを何度も堪えながら、やがてモデルに導かれ挿入した。
Kの興奮と、快感はかつて無いほどに昂まり、一気に解放された。
初めて夢精をした時よりも、強烈な快感が背中から頭に突き抜け、Kは果てた。

下半身をむき出しに、右手で性器を持ち、左手は何かを鷲掴みにしようと曲げられ、上着は胸の下まで捲り上げられ、その裸の腹と、唇に、精液の残滓をこびりつかせた死体が発見されたのは、Kの死後十日経ってからだった。
急性心不全と診断されたが、Kがオナニーで死んだのは明白だった。
Kの死顔は、見方によっては笑っているようにも、泣いているようにも見えた。