浅蜊漁り

猫の小太郎が浅蜊の山を漁っている。
俺が今朝採ってきた浅蜊だ。夕日ヶ浜は、朝日の出る前に潮が引く。少し寒くなってきたが、まだデカイのが採れる。もうすぐ採れなくなるだろう。

ぶち猫の小太郎はいつからか港に住み着いた。俺はまだ漁にひとりで出れないから、舟に乗せてもらえない日は、浅蜊採りか網の修理だ。
浅蜊を沢山採って、小さい山を作ると、小太郎がいつの間にか浅蜊を漁る。俺は近くで知らんぷりをして網を直す。

小太郎は前足だけで、浅蜊を開けて、身を平らげる。普通猫は貝は食べないのだけど小太郎はうまそうな鳴き声をあげて「あおあお」言いながら食う。
俺は春には浅蜊を採る暇もなくなる。だから今のうちにしっかり食えよ。

俺は小太郎が可愛くて仕方なかった。撫でたり、愛想をふったりはお互いしなかったが、快い距離感だった。

明日は漁に出る日だ。小太郎に雑魚でも食わせてやろう。