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未来より大事なもの

2011年03月25日 14:51

ふと目が合うと彼女の眼が濡れていた。
私は彼女の手をそっととり、身体をこちらに引き寄せる。
彼女の身体は重力にまかせて落ちてゆくように、私の腕の中に崩れた。

しばらく見詰め合う。
言葉が見つからない。
いや、言葉はいらないのだ。
そっと顔を近づけると、彼女のまぶたがそっと僕の映る瞳を隠した。

そっと唇を重ねる。
彼女の身体に一瞬固くなって、やがて力が抜けていく。
腕の中に彼女の全てを感じた。

不安定な彼女を支えるようにしながら、唇を重ね続ける。
自然と互いの口が開き、舌がお互いを求め合う。
まるで、今、そこに本当にそれぞれが存在することを確認するかのように。

私が力を抜いていくと、自然と二人は床に静かに倒れていく。
私にはベッドに運ぶ余裕もない。
ただそこに転がるように二人は抱きしめあう。

唇を離してはまた合わせ、髪をかきあげながら時々目と目が合う。
何かを確かめるように繰り返しながら、言葉はいらない。
ただ、開いた窓の外から、蝉の鳴き声が聴こえていた。

彼女の服を一枚ずつ脱がせていくと、薄着彼女はあっという間に生まれたままの姿になる。
指を彼女の胸に優しく滑らせながら、もうひとつの手は彼女の足の方から上に上がってくる。
内股のやわらかさが妙に印象的だ。

彼女の一番感じるところに指が届くと、彼女の身体が少し震えた。
私も優しく指を動かし始めた。

時計はもう予備校模試の始まる時間を過ぎてしまっている。
そのときの私たちには、試験よりも、未来よりも大事なものがそこにあったのだ。

ただ、汗ばむ身体を絡める2つの欲求が、そこには転がっていた。

もう、四半世紀以上の思い出だけど、今もまだ色褪せることがない。

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