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今日の小説:『遠距離恋愛』  第2話

2011年03月05日 08:33

今日はこんな話です。
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  ●怒りのオーラ


  唯が怒っている。
  理由はわからないが、怒りのオーラは伝わってくる。
  「久しぶり…」
  沈黙を破ったのは唯だった。
  「久しぶり」
 そう言ってから僕は、冷めたベトナムコーヒーをあおった。

  東京に住んでいる頃、
  唯とよく通ったベトナム料理屋に2年ぶりに訪れてみた。
  内装もメニューもほぼ変化はないが、
  有名な女性雑誌に掲載されてから人気が出たらしく、
  2年前より明らかに客入りがいい。

  「昔より人が多くて落ち着かないな」
 「私は気にならないけど」
  唯の言葉に険がある。
  「私達、3カ月ぶりよ」
 「そんなに経つか」
  「しかも、3週間ぶり」
 「えっ?何が?」
  「誠二としゃべるの」
  忙しくてしばらく電話しなかったことは認めるが、
  そんなに間が空いていたとは気づかなかった。
  「でも、唯も電話しなかっただろ」
 「…」
  「ケンカはやめよう。今日は日帰りだから、
 一緒に居られる時間があまりないんだ。ね、機嫌なおして」
  「もう帰れば」
 「なんだよ、その言い方。
  取り引き先の用はもう済ませたから、夜の新幹線まで時間はあるよ。
  唯との時間作るために、新幹線の時間を遅くしたのに」

  うつむいたままの唯の肩が震えている。
  泣いているらしい。一体どうしたんだろう?
  慌てて会計を済ませ、彼女の手を引き外へ出た。



  ●まったくの誤解


  とりあえず二人きりになれる場所をと思い、
  僕等はカラオケボックスに入った。
  「気晴らしに歌うか?」
  おどけた調子でマイクを差し出してみたが、
  唯は何も言わない。

  「僕に言いたいことがあるなら、全部言ってみて。
  なんでも聞くから」
  なるべく優しい口調を心がけながら、唯に尋ねる。

  しばらく沈黙が続き、唐突に唯が言った。
  「浮気してるの?」
  「まっ、まさか!」
  僕は、心当たりがないのに動揺したような声を出してしまった。
  「最近、エッチ盛り上がらないから…」
  「それで怒ってるの?」
  唯が頷く。

  まったくの誤解だ。
  このところ仕事がハードで、
  特に出張の時は疲れ切っていることが多いだけだ。
  「誤解だよ。僕が唯一好きなのは唯だけ!」
  唯がクスリと笑った。
  「唯一好きなのは唯だけ」というシャレは、僕の口グセなのだ。
 「機嫌なおった?」
 「うん。でもね…もっと誠二とエッチしたい
  体がつながっていないと心まで離れちゃいそうで不安」

  彼女の素直で切実な訴えに心が揺さぶられ、
  唯が猛烈に愛おしくなった。
  「そうか…言いにくいこと言わせて、ごめん。
  今夜は帰らなきゃいけないから、
  今度会った時にはいっぱいしよう」
  僕は唯の肩を引き寄せおでこキスをした。



  ●耳元でささやいた


  「なあ唯、僕からも一つ提案していい?」
  「何?」
  「僕は唯の色んな顔が見たい。
  だから、唯がもっと気持ち良くなれるようなアイテムを使ってみよう」
  「アイテム?」
  「たとえば、ローターとか」
  「恥ずかしいよ…」
  「今はね、カワイイのとかオシャレなのがあるんだよ。
  すごく香りのいいローションも」
  「…誠二が使いたいなら、いいよ」
  唯が顔を赤くしながら、恥ずかしそうに同意した。

  そんな彼女を見ているだけで、思わず興奮してしまう。
  「手錠とかも…いい?」
  「そんな…」
  「どうしても、唯の恥ずかしがるところが見たいんだ」
  僕は、わざと唯の耳元でささやいた。
  「はぁ…」と僕に寄りかかりながら、艶っぽいため息をつく彼女

  胸のあたりに彼女の丸みとぬくもりを感じ、
  込み上げる興奮を抑えるのが苦しい。

  今度会う日が楽しみでたまらない。
  その日まで唯のあらゆるエロティックな姿を想像し、
  僕は眠れない夜を過ごすだろう。


------------------------続く----------------------------

 また後ほどね

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