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再会に添えて

2009年01月03日 04:25

私は、シルクロードの果て、小さな町で沈没しかかっていた。
すべてがどうでもいいように思えた。私を縛るものは何もない。
ガイドブックを開き、自分で自分に課す旅の目的も、嘘くさく思えた。
食事をとる以外は、一日中すえたベットに体を横たえていた。
体になんの力も湧かなかった。このまま、死んでしまうのも、幸福に思えた。

そうして、二週間ほどが過ぎた。ある日私は視線に気づいて目を開けた。一人の男が私を見下ろしていた。
男は微笑んで、こう言った。「このノートを差し上げましょう」

ぼろぼろになったノートには、日本では決して語られなかった言葉がつづられていた。
無数の旅人が、無数の筆跡で、日本では決して語られなかった本当の言葉をつづっていた。
怒ったように跳ねている文字があった。涙ににじんだ文字もあった。
本当は何故旅に出ようと思ったのか、本当はなぜ沈没してもいいと思ったのか、本当は…。
私は読んでいるうちに、涙が止まらなくなった。
他の国の旅行者が不審がるのも気にせず、私は一晩中、声を上げて泣いた。
そして、次の朝、シルクロードの果てへと旅立った。
そのノートをくれたのがあいつだった。

沈没することを恥ではない。
パッケージツアー旅人には、沈没することはあり得ない。
沈没は、自分の足で歩こうとした旅人にだけ起こる。

あいつがくれたノートを、私は旅の間中、書き写した。
日本で語りたくても語られなかった言葉を必死で書き写した。
どの言葉も内戦や流血を語ってはいなかった。
ただ本当のつぶやきが続いているだけだった。
そして私は日本に帰り、その言葉をパソコン通信で流した。

そのノートは、今もシルクロードを旅している。

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