- 名前
- pinkno-bura
- 性別
- ♂
- 年齢
- 61歳
- 住所
- 岩手
- 自己紹介
- 女装のまま女性として日々を暮らしております。
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生きている矛盾・・・その8
2018年08月19日 18:33
「ねえ直美、あんたあそこに行ったのよね?」
「えっ・・・?行ったって・・・あの・・・夏樹さんの?」
「他に何があるのよ」
「まあ・・・行ったといえば行ったかもしれないけど・・・でもねそれは」
「別にどうでもいいけど」
いやあの・・・訊いといてどうでもいいけどって言われてもですね
「まあどっちにしてももういないわけだからこれでスッキリしたわ」
「スッキリって・・・まあ京子がそう言うならそうかも・・・です」
「なに・・・?何か言いたい事でもあるの?」
「いや・・・あの・・・そんなにいきなりスッキリするもんなのかなって?」
「そりゃそうでしょ?いつまでも私の近くでウロウロされてるよりどこか遠くにでも行ってくれた方が気が楽ってもんでしょ?」
「まあ、確かに・・・」
「まったく、さっさと消えてくれればよかったのよ、それをいつまでも同じ街でさ、こっちは毎日気分が悪くてたまんなかったわよ」
どうたんだろう京子?急に人が変わったみたいに・・・
「ねえ京子、そろそろ帰ろう?」
「直美はあそこに行ったのよね?」
「えっ・・・?」
「それに雪子さんも・・・ホントにもうあの人は一体何を考えてるのかしら?」
「雪子さんは分からないけど私は別にその・・・」
「言いたい事があるんならどうして直接私に言わないのよ・・・陰でこそこそするみたいな真似なんかしなくてもいいんじゃない?」
「だから私は・・・」
「直美の事じゃないわよ、あの人の事よ、陰でこそこそなんてしないで言いたい事があるんなら私に直接言えばいいじゃない?」
いえ・・・あの・・・たぶん言いたい事はないと思うんですけど・・・はい
それに夏樹さんは引っ越してここにはもういないんだから別にそれでいいと思うんだけどな
「まったく最後まで私を無視したままいなくなるなんて人を馬鹿にするのにもほどがあるわ」
「いや・・あの・・無視って」
「だってそうでしょ?離婚したあとだってあの人の借金を私が払ってたのよ?」
「それはまあ・・・」
「でしょ?それだったら最後に一言くらい謝ってから引っ越したっていいんじゃないの?」
「えっ?京子はその事で頭にきてたの?」
「そうよ、あの人の借金を私が代わりに払うのは当たり前みたいにされたら誰だって頭にくるでしょ?」
「う~ん・・・そうかな?」
「そうかなって?直美は違うわけ?」
「だって好きな人の借金だったら・・・それにただの付き合ってたとかっていう関係でもなくて結婚して一緒に暮らしていたんだから私だったら別にいいかな?って思っちゃうけどな」
「だから直美はいつも男に騙されるんでしょ?」
「いつもって、離婚してからは誰とも付き合っていないけど・・・」
「どっちでも同じよ、人の借金を払うくらい馬鹿馬鹿しい事はないわよ」
「でも、それだったら夏樹さんに京子が払った分を返してもらえばいいんじゃない?」
「もうとっくに返してもらったわよ」
「へ・・・?」
「だから気持ちの問題って言ってるのよ、ただお金を返せばいいってもんじゃないでしょ?」
「いやあの・・・」
「あの人は一度も私に謝らないのよ、そういう場合って普通なら謝るもんでしょ?」
「京子は夏樹さんに謝らせたいの?」
「そんなの当然・・・ちょっと直美、変な訊き方をするのね?」
「夏樹さんね、前に言ってた事があるんだ」
「あの人が?何て言ってたの?」
「京子は一度もふられた事がないから自分の感情をどうしたらいいのか分からないんだよって」
「私が・・・?」
「そうよ、京子にとって夏樹さんって特別な人だったんじゃないの?今まで何人と付き合ってきたのか知らないけどさ、京子にとっての夏樹さんってその人たちとは違うんでしょ?」
静かに、けれども耳の奥まで透き通るような声で聞こえるように話す直美の言葉が
京子にとっては意外な言葉だったからなのだろうか?
京子の表情からさっきまで見え隠れしていた嫌悪が消えていくのを直美は感じていた
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