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夜間徘徊

2013年04月04日 23:47

まだ東京にいる頃好きだったことのひとつに、練馬住宅街を夜にぶらぶらすることがあった。

別になんの目的もない。とにかく、これと言って何の特別さもない街をぶらぶらする。一軒家があって、マンションがあって、キャベツ畑があって、教習所があってと、不ぞろいな感じの風景を、ひとりで楽しむ。

昼間にこれをやっても面白くない。夜にやると何だか気分がいい。でも、別にやましい気分は全くない。

ただ単に、都会の住宅地の生ぬるい闇の優しさが好きなだけだ。

新宿渋谷ネオンや喧騒は仕事で立った気分をなだめてくれない。

鼻先一寸先が見えないような原始的な闇は人間社会の優しさがない。物の怪の世界だ。

都会の住宅地の夜というのは、意識が後退するけれども、物の怪の世界になってしまうほど無意識を活発化させもしない。行為と無為のいいバランスで気分がよくなるのだろう。泥酔するほど酒を飲むのではなく、ちょーっとだけ普段と違う気分になれるようにと一杯ひっかけるのと似てるかな。

でも、香港コンクリートジャングルに長いこと住んで、僕はそんな夜間徘徊からずっと遠ざかっていた。

香港は別に危険な場所ではない。夜、女性がひとりで歩ける街だ。でも、画一的団地というのは夜間徘徊には向かんのよ。猫はそんな場所で気持ちよく散歩せん。

そう、僕は猫なのだ。だから、人間社会の保護が残りつつ、人間様があまりでかい顔して出てこない、生ぬるい闇の中を、気持ちよく歩きたいのだ。

で、今住んでる大阪上本町ってそれにぴったりな町。暖かくなってきたことだし、これから仕事に飽きたらこの付近の、ひとにいわせりゃ何が面白いのか分かんない夜を歩き倒すんだろうにゃぁ…

だれか、ご一緒しないかにゃあ。

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