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一線は越えない

2023年07月03日 15:00

私が学生だったころだから、大昔の話なのだけど
高校の友人の一人が私と同じ大学の薬学部に進学してた。
薬学部という所は教育学部をしのいで女性の比率が高く、
友人を介して何人かの女子学生と顔見知りになったわけ。

それでも学生の内はとくに発展することもなく卒業を迎え、
無事就職できた私が配属された街にいたのが、その中の一人H。
元々その街出身だったHは卒業後、薬剤師として働いていた。
今思うとどうやって再会できたのか不思議でならないのだけど、
とにかく旧縁を温めようと飲み会へ誘った。

ちょっとお高めの居酒屋で飲み食いし、ほどほどのところでお開き。
タクシーでHを家まで送ることになった。
当時、実家ではあったものの
両親は父親の仕事の都合で他県に住んでいて
いまはHと妹の二人暮らし。
その妹も出張だったか合宿だったかで留守だった。
つまり1軒家にHひとりの夜。

やがてタクシーは到着し
お茶でも」というHの言葉を真に受けて
Hに続き私もタクシーを降りると、
とりあえず応接間に上がり込んだ。

それからどういうやり取りがあったか忘れたが
その夜はHの家に泊めてもらうことになった。
応接間に布団を用意すると、Hは自分の部屋に引っ込んだ。

そのまま眠ってしまえば何も起きなかっただろうが
その晩は気温がさがり、寒さで眠れない。
しばらく我慢していたがどうにもならず、
Hに頼んで毛布でも出してもらおうと、
Hの部屋の外からそっと声をかけた。

だがHはすでに熟睡してるらしく返事がない。
思い切って扉をあけると薄明りの中にHの寝姿。
こうなると20代残版の音はなど目が効かない。
Hの布団にもぐりこんだ。

やっと目覚めたHは、目を大きく見開いたまま。
私は無言でHを抱き寄せ唇を合わせた。
Hは両腕で私の体を押し戻そうとした。
その時になって私はHが普段着のまま寝ていたことに気づいた。
やはり用心はしていたのだろう。
我に返った私は「ごめん、毛布を…」などと口走りながら応接間に逃げ帰った。

それから20~30分しただろうか、応接間の扉が静かに開いた。
Hだった。
「一緒に…寝ても…いい?」
私は体をずらしてHの入るスペースを作った。
さっきと同じ普段着のまま、Hは私の布団の中に入ってきた。

今度は抱きしめる私の腕から逃れようとはせず
互いの体温を確かめるように私の首に腕をまわした。
触れ合うだけのキスから、少しずつ差し入れる舌に応えるキスへ。
Hの息遣いも次第に荒くなる。

Hのシャツを脱がせ、ブラを外すと
こんもりとした膨らみがわたしの目の前に現れた。
私の掌では包み切れない綺麗な乳房
その頂きの果実を口に含むと
切なげなHの吐息が薄明りの部屋に響いた。

ひとしきりHの乳房愛撫を加えた私は
スカートのすそから手を伸ばした。
少しずつ少しずつ指はHの一番大切なところへ。
最後の布切れに覆われたそこは
こんもりともり上がっていた。

キスを続けながらその盛り上がりを愛撫し、
その部分の湿度の高まりを感じながら
指をHの熱い部分へ。
そこはもう十分に潤っていた。

が…

息を荒げながらHは言った。
「初めては…愛してくれる人に…あげたい…」

Hは処女だったのだ。

私はいっきに覚めた。
Hが嫌いなわけでもない。でも出来なかった。
Hの初めての男になる勇気が無かっただけかもしれない。

スカートの裾をおろし
ブラははずしたままシャツをきせた。
その後は抱き合ったまま朝を迎えた。




その後、Hには学生時代から好きあっていた男がいたことを知った。
それからHとは連絡をとりあっていない。

Hが本当に愛した男と結ばれることを願っていたのは嘘ではない。

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