ワタナベ君、自分だけ気持ちよくなるなんて、ひどくない？

もう昔の話になるけど、僕は村上春樹の「ノルウェイの森」のワタナベ君みたいになってた。

ふたりの女の子の間で板ばさみになってて、ひとりは（幼馴染じゃないけど）精神を病んでいるお嬢様で、もうひとりは（本屋の娘でもなく、両親亡くしてもいないけど）世間知らずでバイタリティーばっかりあるエナジーボール。

そのうちのひとりは、小説に出てくるふたりの女の子のひとりと同名だったし。

まあ、その名でない方の子の「村上春樹なんて読んでると、人間ダメになるよ」との脈絡もないつぶやきに、村上作品をまだ読んだことがなかった僕は困惑するだけだった。その疑問が霧消したのは、30過ぎて広東省深センの大書店で山積みになっていた「ノルウェイの森」（中国語訳）を買って読んでからだ。

でも、そんな自分の昔話みたいやなと思いながら読んだ「ノルウェイの森」で僕はちょいと違和感を感じたことがある。

緑が、ワタナベ君に手コキを「してあげる」場面がある。この「してあげる」って発想は、僕を板ばさみにしていたふたりにはなかった。「気持ちよくしてあげる」のはあくまでも僕のほうだった。小説では女の子が性的なところでは少なくともワタナベ君に対しては受身であることが、僕にはなんだか引っかかった。

緑って性欲旺盛な子だ。前の彼氏との関西への旅行の時は、さぁ、やりまくるぞと意欲満々だったなんてことを言い出して、ワタナベ君をぎょっとさせるんだもの。

そんな緑がヤりたくて仕方がない時に、ワタナベ君はそんな彼女には、まだ気持ちの整理がついてないとか言って、手コキ「してもらう」だけにする。僕はその時、「これじゃ緑がかわいそうじゃないかぁ！」と思った。女の子がヤりたくてたまんない時に手コキなんてしたら、余計にヤりたいって気分高まっちゃうんじゃないの？

自分はすっきりして、相手をさらに悶々とした状態に放置して、それが正しいって何だか違うって思っちゃったのだ。

僕だったら、手コキ始めた時点で、「まだ心の整理がついてないんだ」と言うよ。マジで。だってさ、ふたりとも性欲に満ち満ちた状態でこっちだけ気持ちよくなっちゃったら、相手が可哀想じゃない。（まあさ僕には、手コキやフェラじゃとてもじゃないけど、イけないという問題もあったけどさ…）

そんな経験あるんだよね。手マンやクンニでお相手を何度もイかせて、こっちはやる気満々って時に「まだ、心の整理がついてないから」とか、もっとひどい場合には「これで私の性欲は満たされた」なんて言われて、かなり悲惨な気分になったことあるもん。そういことは、ベッドに押し倒された時点で言ってね、と思ったよ。

あるいは、僕の女性の性欲についての感覚が世間のものとずれてのかなぁ。

初体験で同級生の美少女に強姦されちゃったから、女の子に性欲があって、ヤりたいという気分になるなんてことは、僕にとっては当たり前のことだった。でも、女の子に性欲があると知ってびっくりしちゃう男って結構いるみたいだよね…

だから、お題に戻れば、女性から誘うなんて、別に特別なことでもなんでもないと思っちゃうな。