欲求

その人に触れたいか、触れたくないか。
出合った瞬間、自分の中で欲求が生まれる。


骨ばった手や、細いのに男らしい腕。
笑顔が意外と可愛くて、
写真の中の不敵な笑みとは実際は少し違った。

触れたいのに、触れられない。

頭の中では、彼の首すじに舌を這わせて、
体を貪欲に貪り尽くしている。
彼はどんな声で啼くんだろう。
その時、どんな顔を見せるんだろう。
貴方の匂いはどんな匂いなんだろう。

きっと恋ではなくて、完全な肉欲。
無邪気に楽しい時間を過ごす彼とは裏腹に、
笑顔の下では卑猥な空想を巡らすばかり。


また、会いたい。
でも、もう会いたくない。
手に入れられないのも判っているし、
手に入れたとしても壊れてしまうものがある。

貴方のバイクの後ろに乗ったとき、
背中に触れる事ができなかったのは
きっと私の方が汚いから、だね。

その腕で、抱きしめて。
貴方が欲しい。

叶わない想いを言葉にして、
そっと埋めてしまいたい。
そんな夏の夜でした。